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家庭向けのシェア2.7%、新電力300社以上が自由化6カ月目に:動き出す電力システム改革(78)(2/2 ページ)
電力の小売全面自由化から6カ月後の競争状況を国の委員会が検証した。新電力の数は300社を超える一方、家庭向けの販売シェアは2.7%にとどまっている。東京・関西・北海道でシェアが高く、その他の地域は低い。地方では自治体が出資する事業者が増えて、シェアの上昇に期待がかかる。
小売電気事業者の40%が東京都に集中
小売の全面自由化に先立って、2015年8月から小売電気事業者の登録申請が始まった。それから1年半が経過した2017年1月25日の時点で、小売電気事業者の登録件数は374社に達した(図5)。市場の競争を促進するには十分な事業者数だ。
ただし各社の本社所在地を見ると、全体の40%にあたる145社が東京都に集まっている(図6)。東京都以外の関東6県を加えると過半数の53%を占める。市場の規模が大きい地域に新電力が集中するのは当然で、競争状況に差が生まれる。近畿には53社が本社を置いて小売事業を展開している。対照的に沖縄には1社、北陸には2社しか存在しない。
これから地方のシェアを高める期待がかかるのは、自治体が出資する「地域新電力」である。電力・ガス取引監視等委員会が2016年10月に調べた時点では東北・関東・中部・近畿・中国・九州の6地域に、合計18社の地域新電力が発足している(図7)。
代表的な例は福岡県みやま市が出資する「みやまスマートエネルギー」である。地域の再生可能エネルギーを中心に電力を調達しながら、企業や家庭に販売して電力の地産地消を推進中だ。九州電力よりも安い単価を設定して利用者を増やしている。地域新電力が各地域の競争を加速させる原動力になることは間違いない。
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