ガス自由化の営業指針、料金算定や代理販売の注意点を公表:電力供給サービス
経済産業省は2017年4月からスタートするガスの小売全面自由化に向け、ガス小売事業者向けの営業指針を発表した。料金算定の方法や契約、代理店などを利用して販売する際の注意点などをまとめている。
2017年4月1日から始まる都市ガスの小売全面自由化に向けて、経済産業省が「ガスの小売営業に関する指針」を公表した。ガス小売事業者を対象にしたもので、今後の営業活動において関係事業者がガス事業法および関係法令を順守するための指針と、関係事業者による自主的な取り組みを促すための指針をまとめている。
同指針は主に5つのテーマで構成している。「需要家への適切な情報提供」「営業・契約形態の適正化」「契約内容の適正化」「苦情・問合せへの対応の適正化」「契約の解除手続等の適正化」だ。それぞれの項目について、原則として、需要家の利益の保護やガス事業の健全な発達を図る上で望ましい行為や、ガス事業法上問題となる行為、ならない例などを示している。また、ガス小売事業者に課される供給条件の説明義務や契約締結前・締結後の書面交付義務に関するガス事業法の関連法令の解説も掲載した。
需要家への適切な情報提供については、ガス小売事業者が料金請求の根拠となるガス使用量などの情報を明示する必要がある他、「当社のガスであれば供給に支障が生じにくい」「当社と契約しないとガス漏れなどの緊急時対応が一切なくなる」など、需要家の誤解を招く情報提供による営業活動は問題になる。
電力と同様にガス自由化で想定されるのが、ガスとその他のサービスを組み合わせたセット販売だ。その際、必要な説明や契約締結前・後に交付書面への記載をしないことは問題行為とし、同時にガス料金単体での金額算出方法についても明示する必要があるとした。一方でセット販売時に割引を行う場合、ガス料金への配分金額(割引額)については、明示の必要はない(図1)。
営業・契約形態の適正化の観点では、ガス小売事業者が、業務提携をしている媒介、取次、代理業者を自社のWebサイト上などで分かりやすく公表することが望ましいとしている。なお、業務提携先の企業が「自社のガスを供給している」といった表示を行い営業活動をすることは、問題行為に該当するとしている(図2)。
指針の中では「電力の小売全面自由化前後の状況を振り返ると、ガスの小売全面自由化に便乗して、ガス小売事業者の代理店であるなどと詐称し、各種機器の販売の勧誘を行う事例が発生することが予想される。これらの中には、長期間かつ高額のリース契約を伴うものなど、解約に際してトラブルが発生する可能性が高いものが含まれることもある」と指摘。
こうした状況を踏まえ、トラブルを防ぐためにも、ガス小売事業者側が業務提携をしている媒介・取次・代理業者を自社のWebサイト上において分かりやすく公表することが望ましいとした。
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