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電力会社10社の売上高が前年比8.3%減少、燃料費で稼ぐ時代は終わる:電力供給サービス(3/3 ページ)
電力会社10社の2016年4〜12月の売上高は、前年から8.3%減少して合計で13兆円にとどまった。販売量が1.1%減ったことに加えて、燃料の輸入価格の変動に伴う調整額の減少分が大きい。東京電力をはじめ6社が減益に陥る一方、原子力発電所を再稼働させた九州電力が利益を大幅に伸ばした。
九州で原子力と再エネの発電量が増加
対照的に利益を大幅に増やしたのが関西電力と九州電力である。関西電力は販売電力量が前年から4.6%も減ったが、2015年6月に実施した電気料金の値上げによって収入の減少を抑えた。燃料輸入価格による影響は他の電力会社と変わらないものの、値上げの効果で増益を達成している(図8)。利用者の負担増加に支えられた格好だ。
10社の中で最大の増益を記録した九州電力では、原子力発電所の再稼働に伴う燃料費の縮小が利益に大きく貢献した(図9)。燃料費の安い原子力発電で火力発電を抑制した効果は360億円にのぼる。ただし使用済み核燃料の再処理費用などを積み立てる「原子力バックエンド費」が64億円(再稼働による影響分は70億円)増えて、利益に対する貢献額は差し引き290億円である。それでも九州電力の増益額の大半が再稼働の効果だ。
実際の発電量を見てみると、原子力が大きく伸びていることがわかる(図10)。前年と比べて2倍以上の規模だ。川内原子力発電所の1号機が2015年9月に、2号機が同年11月に通常運転を再開した。2016年度の年間では原子力の比率がさらに高くなる。それに伴って火力が減って、よりいっそう利益を押し上げていく。電力会社が国民の反対の声をよそに原子力発電所を再稼働させる理由は、まさにこの点にある。
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