関西電力の「赤穂発電所」、石炭への燃料転換を中止:蓄電・発電機器
関西電力は兵庫県赤穂市の火力発電所である「赤穂発電所」の燃料転換計画の中止を発表した。石炭への切り替えを中止し、これまで通り重油・原油を利用した運用を継続する。関西の電力需要の減少や、CO2排出量の削減に向けた対策の強化が求められていることなどが理由としている。
兵庫県赤穂市にある関西電力の火力発電所「赤穂発電所」の燃料転換計画の見直しが決まった。当初計画していた石炭への切り替えおよびそれに伴う設備改修を中止し、これまで通り重油・原油を利用した運用を継続する。
赤穂発電所は汽力発電方式で、2機合計120万kWの出力を持つ。赤穂市南部の旧塩田跡地に建設され、1987年から稼働を開始した(図1)。
関西電力は赤穂発電所で使用する燃料を、現在の重油・原油から石炭に変更する計画を2015年3月26日に公表。燃料転換に向けてボイラーや燃料設備の改造を行い、2020年度に運転を再開する計画だった。燃料を石炭に切り替えることで、調達の安定化や発電コストの低減を図る狙いだ。
同社はこの燃料転換計画に際し、同年11月10日に兵庫県知事に対し燃料転換計画を環境影響評価概要書を提出していた。しかし、同知事からは燃料転換などにより二酸化炭素総排出量が増加する点、改修後も既存設備のタービンを利用することから燃料転換後も蒸気条件は超臨界圧(SC)であり、超々臨界圧(USC)相当の石炭火力発電所に比べ発電効率は劣る点、二酸化炭素総排出量の削減方策が十分ではないといった意見が提出されていた。
今回この燃料転換計画は中止となったが、その理由について関西電力は「計画の公表以降、節電の定着や省エネの進展などにより関西の電力需要が減少し、今後も大きな伸びは期待できない状況にある。また2015年7月に2030年のエネルギーミックスが策定され、政府の温室効果ガス削減目標が設けられるなど、CO2排出量の削減に向けた対策の強化が求められていることなど、当社を取り巻く経営環境の変化を勘案した結果」としている。
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