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ショートしない全固体リチウム電池、世界最高レベルの導電率:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
産総研の研究グループは高い安全性と信頼性を実現した小型全固体リチウム二次電池を開発した。単結晶を用いて作製した固体電解質部材は、酸化物系で世界最高レベルの導電率を実現したという。
「世界最高のリチウムイオン伝導率」
今回の技術では、単結晶成長方法の1つである「フローティングゾーン溶融法(FZ法) 」を用い、合成が困難と思われていた固体電解質材料であるガーネット型酸化物単結晶を合成した。得られた単結晶を用いて作製した固体電解質部材は、従来の焼結体よりも稠密で、金属リチウムの貫通を防ぐことができる。
短絡試験を行った結果、10mA/cm2の大電流でも内部短絡は起こらなかった。また、25度で導電率10-3S/cmを超え、有機電解液と同等以上のリチウムイオン導電率を示した。研究グループは「現時点で酸化物系固体電解質材料では世界最高のリチウムイオン導電率を示した」としている(図2)。
さらに、作成したガーネット型酸化物単結晶を用いた固体電解質部材の基材に、産総研独自の常温製膜技術である「エアロゾルデポジション法(AD法)」という手法を用い、正極のニッケル系酸化物材料を製膜した。これにより、従来からの課題であった電極と電解質界面の高い密着性を実現した。研究グループは「25度で充放電が可能で、短絡・発火の危険性がほぼ全くない、高い安全性と高い信頼性を併せ持つ全固体リチウム二次電池を開発できた」としている。なお、作成した全固体リチウム二次電池の直径は5mm、厚さ0.7 mmだ。
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