見えた製造業の導入メリット、日本初の燃料電池の活用事例:省エネ機器(2/2 ページ)
軸受製造などを手掛けるポーライトは、自社工場に産業用の燃料電池システムを導入した。Bloom Energy Japanが販売する産業用燃料電池システム「Bloomエナジーサーバー」を導入したもので、都市ガスの供給エリア外で燃料電池を活用する仕組みを整えたユニークな事例だ。電力コストやCO2排出量の削減だけにとどまらない、製造業ならではの導入メリットとは?
製造業ならではの導入メリット
ポーライトは、今回のBloomエナジーサーバーの導入に当たり、合計で約4億6000万円の投資を行った。燃料電池システムに対する投資額の約3分の1を経済産業省の「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」、さらに埼玉県の「埼玉県業務用燃料電池導入補助金」で約5000万円をまかなっている。
では、コスト面での導入メリットはどの程度なのか。まず、熊谷第二工場における電力コストは約10%程度削減できる見込みだ。そしてもう1つの大きなメリットが、同工場にで生産している製品の製造コストを下げられるという点である。
熊谷第二工場では、燃料電池セルの中に利用されている金属セパレーターという部品を製造している。ポーライトは今後の燃料電池市場の拡大を見越し、数年前に設備投資を行い、量産に踏み切った。実はこの金属セパレーターは、Bloomエナジーサーバーの燃料電池セルに採用されている(図3)。
同社の金属セパレーターは、クロムなどのレアメタルの金属粉末を、焼結というプロセスによって固めて製造している。焼結には多くの電力を必要とするが、もしその途中で停電などによって製造設備が停止した場合、設備内の高価な金属材料は全てムダになり、損失となってしまう。熊谷第二工場では、落雷などによる停電で、これまでに何度も製造設備を止めざるをえないことがあった。
Bloomエナジーサーバーを構成する1つのモジュールはUPS(無停電電源装置)の役割を持っている。今回の導入により、停電などが発生しても製造設備の稼働を継続させることができ、製品製造における損失の低減や効率化を図れるようになった(図4)。電力コストの削減だけにとどまらない導入メリットが期待できるというわけだ。CO2排出量の削減にも寄与できる。
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