始まった首都圏ガス競争、ニチガスはIT活用で東京ガスに価格勝負:電力供給サービス(2/2 ページ)
2017年4月から始まる都市ガスの小売り全面自由化に向け、各社の動きが活発になってきた。東京電力と“対東ガス連合”を組むニチガスが、料金メニューを発表した。標準家庭で東京ガスの一般ガス料金より最低でも3.6%、最大で28.6%安くなる料金メニューを用意した。
プラットフォーム戦略を推進
和田社長は今後の展望として、以前から掲げているプラットフォーム戦略の重要性を強調した。ニチガスと東京電力は都市ガス販売に必要な機能やノウハウを融合するプラットフォームを構築する方針を打ち出している。
「独占企業の独占価格を排除するだけが自由化の目的ではない。異業種の連携による新たなイノベーションを起こし、価値のあるプラットフォームを作っていかなければ意味がないと考えている」(和田社長)
このプラットフォームの一角を担っているのが、ニチガスが「雲の宇宙船」と呼ぶ独自に開発したクラウド型の基幹業務システムだ。ニチガスは以前からガス業務におけるIT活用を進めて、業務の効率化およびコスト削減に注力している。東京ガスの一般ガス料金より安く設定した都市ガス料金も「『雲の宇宙船』による業務改革が大きく寄与している」(和田社長)という。ビットコイン決済への対応も、こうしたIT活用の一環だ。
こうしたプラットフォームを軸に、ニチガスは新たに市場に参入する異業種との連携を強化していく考え。和田社長は「今回発表した都市ガスの料金プランにもまだまだ満足していない。より効率的を目指し、ITベンチャーと組みながら(料金を下げる)努力をしていく」と語った。
首都圏のガス競争が加速
ニチガスはこれまで都市ガスの供給について全量を東京ガスと契約していたが、2016年5月から東京電力に切り替えた。東京ガスから見れば、都市ガスの卸供給先にいるエンドユーザーを奪われたかたちだ。
一方、その東京ガスは2月上旬に埼玉県でLPガス販売を手掛けるサイサンとの提携を発表するなど、こちらも事業基盤の拡充を図っている。東京電力は2017年7月から都市ガスに参入する予定だが、連合するニチガスが動き出したことで、東京ガスが持つ約1100万の顧客獲得に向けた競争がいよいよ本格化する。
関連記事
- 東京電力が提携したニチガスの競争力、関東の100万顧客とITシステム
関東一円でプロパンガスと都市ガスを販売するニチガスが、東京電力の販売代理店になって2016年4月から電力とガスのセット販売に乗り出す。100万強の顧客を抱えるニチガスはエネルギー業界でも最先端のITシステムを駆使したサービスを提供することで知られている。 - 東京電力、都市ガス自由化でシェア1割獲得へ
東京電力がついに2017年4月から自由化される家庭向けの都市ガス小売市場に参入すると発表した。既にLNGの卸供給で提携しているニチガスとの関係をさらに深め、両社合計で2019年度までに100万件の顧客獲得を目指す方針だ。 - 電力会社とガス会社の競争さらに激しく、料金の値下げが加速
2017年4月に始まる都市ガスの小売全面自由化で、電気料金と合わせた値引き競争が激しさを増していく。家庭向けに都市ガスを販売できなかった電力会社がLNGの調達力を武器に攻めに転じる。電力と違って都市ガスの供給・保安体制を1社で整備することはむずかしく、新たな提携関係が拡大する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.