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資源に影響を与えない地熱発電所、日本一の温泉県で動き出すエネルギー列島2016年版(44)大分(1/3 ページ)

地熱発電で全国の先頭を走る大分県では、さまざまな方式で電力を作る。低温の蒸気と熱水を利用するバイナリー方式のほか、温泉水を使わずに地中の熱を吸収して発電する実証設備が世界で初めて運転に成功した。森林地帯と臨海工業地帯では大規模なバイオマス発電所が電力の供給を開始した。

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 圧倒的な地熱発電の規模を誇る大分県の九重町(ここのえまち)で、新しい発電方式を採用した実証プラントが2016年9月に世界で初めて運転を開始した(図1)。ベンチャー企業のジャパン・ニュー・エナジー(JNEC)が京都大学と共同で開発した「JNEC地熱発電方式」を採用している。


図1 「ジャパン・ニュー・エナジー水分発電所」の設備(画像をクリックすると拡大)。出典:ジャパン・ニュー・エナジー

 この発電方式の特徴は地中の温泉水を使わない点にある。通常の地熱発電設備は地中から高温の蒸気と熱水をくみ上げて、発電した後に熱水を地中に戻す方法をとる。温泉資源に影響を与える懸念があるため、温泉事業者などが発電所の建設に反対するケースも少なくない。

 JNEC地熱発電方式では地下1000メートル以上の深さまで、二重管構造の地中熱交換器を埋設する。地上から二重管の外側に水を加圧して送り込み、地中の熱で高温になった水を内側の管を通じてくみ上げる(図2)。地上に出た高温の熱水を減圧すると蒸気が発生して、タービンを回して発電する仕組みだ。このサイクルを続ければ、地中の温泉資源に影響を与えずに地熱を取り出すことができる。


図2 「JNEC地熱発電方式」の仕組み。出典:ジャパン・ニュー・エナジー

 それに加えて発電所を建設できる対象の場所も広がる。従来のように地中で温泉水がたまっているところを特定する必要がなく、高温の地熱が分布している地域であれば二重管を埋設して熱を回収できる(図3)。地熱発電の大きな課題になっている開発期間の短縮と開発コストの低減につながる。


図3 地熱発電所の建設に向けた掘削工事の様子。出典:中村建設

 ただし現在の実証プラントの発電能力は24kW(キロワット)と小さい。JNECと京都大学は性能向上の研究開発を続けて、2025年をめどに3万kW級の大規模な発電設備の建設を目指す。

 日本には世界で第3位の地熱資源量がありながら、環境保護や導入コストの問題で開発が進んでいない。温泉水に影響を与えない発電方式を低コストで実用化できれば、全国各地に広がっていく期待がふくらむ。

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