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ダムの放流水で小水力発電、県と市が連携して270世帯分の電力を作る自然エネルギー(1/2 ページ)

福岡県の山間部にある治水用のダムに新しい小水力発電所が完成した。4月1日に運転を開始する予定で、年間に270世帯分の電力を供給できる。売電収入は年間3300万円を見込む。ダムが立地する県南部の、うきは市が建設・運営する。3億円を超える総事業費のうち1億円を福岡県が補助した。

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 福岡県が管理する15カ所のダムの中でも、うきは市にある「藤波ダム」は最も新しくて2010年に運用を開始した。県の南部を通って有明海へ注ぐ「筑後川」の上流にある(図1)。川の流域の洪水を防ぐ目的で造った治水用のダムだ。

 通常時も下流の自然環境を保護するために放流を続けている。その放流水を取り込んで小水力発電に利用する。


図1 「藤波ダム」の所在地と全景。出典:福岡県県土整備部、うきは市

 うきは市は2015年度から小水力発電所の建設に着手、2017年2月に工事を完了した。藤波ダムの取水設備から延びる既設の放流管に水圧管路を追加して、発電所の内部にある水車発電機まで放流水を取り込む仕組みだ(図2)。この間の水流の落差は40メートルに達する。


図2 「うきは藤波発電所」の建設地点(画像をクリックすると拡大)。出典:うきは市

 最大で毎秒0.55立方メートルの放流水を使って、発電能力は162kW(キロワット)になる(図3)。現在は発電設備を調整中で、4月1日に運転を開始する予定だ。年間の発電量は98万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して270世帯分に相当する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は69%になり、小水力発電の標準値60%を上回る。


図3 発電所の建設イメージ(画像をクリックすると拡大)。青色は既設の放流管、赤色は新設の水圧管路、Pは水車発電機、左に見えるのはダムから続く放水路。出典:うきは市

 発電した電力は全量を固定価格買取制度で売電する方針だ。1kWhあたりの買取価格は34円(税抜き)で、年間に3300万円の売電収入を見込める。20年間の買取期間の累計では6億6000万円になる。一方で建設工事にかかった総事業費は3億4400万円である。そのうち1億円を福岡県の補助金でまかなった。稼働後の運転維持費を加えても十分に採算がとれる。

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