食品廃棄物でバイオガス発電、940世帯分の電力と原料・資金も地産地消:自然エネルギー(2/2 ページ)
静岡県の牧之原市で食品廃棄物を利用したバイオガス発電所が運転を開始した。市内と県内から1日に80トンの食品廃棄物を収集して940世帯分の電力を作る。建設資金を地元の金融機関から調達して、工事も県内の建設会社に発注した。同様の地産地消モデルを全国7カ所に展開していく。
東京都内でも建設計画が始まる
この発電事業を企画したアーキアエナジーは「新たな食品リサイクル・ループ」のモデルケースとして、牧之原バイオガス発電所の建設を推進した。グループ会社のゲネシスが食品関連事業者から残さを収集して発電所を運営する。さらに副産物の飼料・肥料を農家に供給して食品の生産・販売につなげる取り組みだ(図4)。
プロジェクトを推進するにあたって、建設に必要な資金の調達、工事や完成後の運営も地元の企業に委託する方針を貫いた。資金は静岡銀行をはじめとする民間の金融機関からプロジェクトファイナンス方式で調達して、国や県から補助金は受けない。工事は県内の建設会社に発注し、発電所を運営するゲネシスは牧之原市に本社を置いている。
発電事業にかかわる業務を可能な限り地産地消スタイルで実施することによって、再生可能エネルギーを通じた地方創生のモデルを構築することが狙いだ。アーキアエナジーは牧之原市のプロジェクトに続いて、東京都内にバイオガス発電所の建設を計画している。さらに関西地区と東海地区で1カ所ずつ、北関東地区では3カ所に展開して、2020年までに合計7カ所へ拡大させる(図5)。
全国では都市部を中心に年間に約2000万トンにのぼる食品廃棄物が発生している。その多くは飼料や肥料として再利用できるが、農業や畜産業の縮小によって消費量は減少傾向にある。新たにバイオガス発電の原料に生かして再利用率を高めることが可能になる。
牧之原市を例にとると、市内で発生するバイオマス資源のうち、最も多いのは浄化槽の汚泥で、2番目が家畜ふん尿、3番目が食品廃棄物(産廃系生ごみ)である(図6)。食品廃棄物の84%は再利用しているが、残る廃棄物を周辺地域の排出分と合わせて再生可能エネルギーの電力に転換できる。
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