ガスも無線通信で遠隔操作へ、消し忘れ見守りサービスにも生かす:エネルギー管理(2/2 ページ)
東京ガスと京都大学がスマートメーター用の国際標準規格に準拠した無線通信技術を世界で初めて開発した。ガスのスマートメーターと家庭内の機器を無線通信でつなぎ、遠隔監視システムから消し忘れの通報や遮断操作を実施できる。スマートメーターを使って電力と同様のサービスを提供する。
超音波でガスの流量を瞬時に測定
F-RIT(IEEE802.15.4e)はスマートハウスなどを実現する無線通信の国際標準規格「Wi-SUN」の一部を構成する(図4)。Wi-SUNは第1層から第7層までの通信プロトコルを組み合わせて、無線通信による各種のサービスを提供できる。
F-RITは7層のうちの下位から2層目にあたり、通信する機器間の信号の受け渡し法を規定している。異なるメーカーの機器同士でも信号をやりとりしてデータの送受信を可能にする。エアコンなどの家電機器とスマートメーターをつなぐ「ECHONET Lite」は最上位の第7層を規定したもので、電力の消費量などのデータを機器間で送り合う場合に必要になる。
東京ガスは2005年から家庭用のガススマートメーターを市場に投入して設置台数を拡大中だ。最新のガススマートメーターは超音波を使ってガスの流量を瞬時に測定できる(図5)。遠隔自動検針のほかに、揺れを検知する感震器や遮断弁を内蔵してガスの安全性を高めている。
戸建て住宅やマンションにもガススマートメーターを拡大しながら、広域の通信ネットワークと住宅内の無線通信ネットワークを組み合わせて、次世代のガススマートメーターシステムを展開する計画だ(図6)。すでに東京ガスは電話回線を利用して自動検針や遮断操作を提供するサービスを実施中だが、今後は電話回線に依存しない柔軟性の高い無線通信ネットワークを構築してサービスを拡充する計画だ。
無線通信を可能にする方法はF-RIT以外にもある。東京ガスはソフトバンクと共同で、携帯電話用の高速通信規格である「LTE(Long Term Evolution)」を使った実証実験にも取り組んでいる。東京都内の約500戸の家庭を対象に、低消費電力型のLTE端末とガススマートメーターを組み合わせたガス消し忘れ見守りサービスの有効性を検証する(図7)。
図7 ガススマートメーター用の通信規格を搭載したLTE通信端末(上)、ガス消し忘れ見守りサービスの実証実験イメージ(下)。LTE:携帯電話用の高速通信規格、GW:ゲートウエイ。出典:東京ガス、ソフトバンク
LTE通信端末も電池だけで10年以上の稼働が可能で、ソフトバンクが推進するIoTサービスの中で重要な役割を担う。実証実験は2016年10月から2017年3月までの6カ月を予定している。ガスの消し忘れを遠隔から止めるまでにかかる通信時間や通信成功率などを確認して実用化を目指す。東京ガスは複数の無線通信技術を使ってガススマートメーターシステムを拡大していく。
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