福島県で最大のメガソーラー建設計画、3万世帯分の電力を2020年に:自然エネルギー(2/2 ページ)
復興に向けて再生可能エネルギーの導入が加速する福島県で最大のメガソーラーの開発プロジェクトが始まった。北部の山地に広がる南向きの斜面を利用して、発電能力が83MWに達するメガソーラーを建設する。並行して東京電力を中心に2020年に向けて送電線の増強計画が動き出した。
阿武隈山地の送電設備を増強
相馬市から福島県の南部まで連なる阿武隈山地では、太陽光発電のほかに風力発電でも大規模な開発プロジェクトが進んでいる。山地には年間を通して風が吹きつける。福島県の太平洋沿岸地域を新産業で復興させる「福島イノベーション・コースト構想」の一環で、国が支援して阿武隈山地に風力発電の一大拠点を形成する計画だ(図4)。
風力発電の導入量を拡大するために、地域の送電設備を増強する取り組みも始まった。福島県が出資して県内各地に太陽光発電を展開中の福島発電と東京電力グループが共同で、「福島送電合同会社」を3月15日に設立した(図5)。
政府がイノベーション・コースト構想と合わせて2016年度から着手した「福島新エネ社会構想」に基づくプロジェクトである(図6)。阿武隈山地と同様に風力発電の拡大が見込める沿岸部の双葉町の周辺を加えた2つの地域を対象に、新たに送電線と変電所を建設する。2020年までに工事を完了して運用を開始する予定だ。
福島送電は地域の発電事業者の開発計画をもとに、送配電事業者の東京電力パワーグリッドと共同で送電線と変電所の設計・建設を進めていく。送電線の設計・工事と維持・運用にかかる費用の一部は発電事業者が負担するスキームを想定している。送電設備を増強できれば、風力を中心に再生可能エネルギーの発電設備を拡大して、CO2(二酸化炭素)を排出しない電力を東京電力エリアにも供給することが可能になる。
福島県では復興の柱の1つとして再生可能エネルギーの導入量を飛躍的に拡大する方針で、2040年には県内で消費する電力の100%以上を再生可能エネルギーで供給する目標を掲げている。震災後の2013年度に開始した「再生可能エネルギー先駆けの地アクションプラン」をもとに、2018年度までの6年間に太陽光を中心に風力やバイオマス発電の導入量を拡大していく(図7)。
さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、再生可能エネルギーの電力を使ってCO2フリー水素を製造するプロジェクトが進行中だ。天候によって発電量が変動する太陽光と風力の余剰電力で水素を製造して、東京まで輸送して水素ステーションや選手村の燃料電池などに供給する(図8)。
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