再エネ50%を目指す米加州、系統安定化へレドックスフロー電池を実証導入:蓄電・発電機器
2030年までに再生可能エネルギーの導入率50%を目指している米国カリフォルニア州。系統安定化を目的に、住友電工のレドックスフロー電池を利用した蓄電システムの導入実証が始まった。
住友電気工業は米国・カリフォルニア州政府および米国大手電力会社のSan Diego Gas and Electric社(DG&E社)と協力し、同州サンディエゴで米国最大規模となるレドックスフロー電池を用いた蓄電システムの運転実証を2017年3月16日から開始した。今回の運転実証は同社が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から実証委託を受け実施するもの。
カリフォルニア州は、大規模な水力発電を含まない再生可能エネルギーの割合を2020年までに33%、2030年までに50%とするなど、全米でもハワイ州に次ぐ高い目標を掲げている。一方で、太陽光発電の増加による朝夕の急激な需要変動が観測される需要曲線(ダックカーブ)や電力品質低下の問題が顕在化しつつある。
そこで、州法AB2514(エネルギー貯蔵システムの導入目標を課す州法)で電力貯蔵装置の導入義務を電力会社に課すとともに、州内の各公益機関は協力して蓄電池ロードマップ(Energy Storage Roadmap)を策定し、蓄電池が適正な収入を得られるような制度設計を行っている。こうした中で、NEDOは2015年9月にカリフォルニア州の経済促進知事室(GO-Biz)とMOUを締結し、同社を委託先として、同州サンディエゴで蓄電池の普及展開に向けた送電・配電併用運転による経済価値向上の検討を進めてきた。
今回の実証では、系統用蓄電池として長寿命、高い安全性を有し、高速応答性が必要な用途(短周期)と長時間容量が必要な用途(長周期)のいずれにも適しているレドックスフロー電池(2MW×4時間)を用い、SDG&E社の協力を得て、変電所内に同蓄電池を設置し実証を行う。具体的には、配電網において周波数調整、電圧調整、余剰電力対応などの複合的(多用途対応)運転を行い、変電所内に設置したレドックスフロー電池の信頼性・経済性について評価する。
その後、系統運用機関からの指令を受けて送電網でのアンシラリーサービス(周波数や電圧の制御及び、緊急時の予備力確保といった電力サービス)などへの貢献について技術実証を行い、レドックスフロー電池の経済価値を向上させる配電・送電併用の運用実証を実施する。
この実証事業を通じて、再生可能エネルギー増加による周波数・電圧変動、余剰電力などの課題解決とともに、蓄電池の費用対効果の向上を目指す。
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