太陽光に頼る途上国、フィリピンの事例:自然エネルギー(2/2 ページ)
途上国の電力事情は日本とどのように違うのだろうか。地熱発電で知られるフィリピンは太陽光発電の導入量を急速に増やしている。大容量蓄電池の導入も始まった。
日本とは違う道を歩んだフィリピン
フィリピンの国土は日本といくぶん似ている。面積は30.0万平方キロメートル(日本の79%)、人口は1億200万人(同81%)。どちらの国も約7000の島々からなり、火山活動が活発だ。
フィリピンは一次エネルギーの約3割を石油に頼っており、ほぼ全量を輸入に頼る。このため石油依存度を下げ、エネルギーの多様化に早くから取り組んできた*4)。発電について多様化の柱は、これまで地熱と水力だった*5)。地熱の設備容量(2015年末時点で1.9GW)は米国についで世界第2位である。
図4に2014年における発電量を示した。総発電量773億キロワット時(77262GWh)に占める石油の比率は7%と低くなっている。石炭についで再生可能エネルギーが2位(26%)に付けた。水力と地熱の比率は約9:10である。
DoEのCusi氏は再生可能エネルギーを用いた発電量が32%であると述べていることから、約2年で6ポイントも同エネルギーが増えた計算になる。
*4) 原子力発電に対しては否定的だ。日本と同じ1955年に、米国とフィリピンは原子力協定を結び、研究開発を開始した。しかし、1985年にほぼ完成した原子力発電所(出力62万キロワット)は政府による運転認可が得られなかった。1995年から再導入を試みるも、2011年3月に起きた日本の原子力発電所事故を受けて、開発を断念した。
*5) 日本の発電量は1兆400億キロワット時であり、フィリピンの13倍以上。日本は地熱資源に恵まれているにもかかわらず地熱発電の設備容量はフィリピンの約4分の1(0.5GW)にすぎない。2014年度における電源比率は石油10.6%、石炭31.0%、天然ガス46.2%、水力9%、その他の再生可能ネルギー(地熱・新エネ)3.2%だった。
図4にはバイオマスや廃棄物、太陽光、風力も描かれている。しかし、2014年当時は量が少なく、見分けることが難しい。
フィリピンの電化率は2013年時点で80%。約2100万人の国民が系統電力から切り離されたままだ。
フィリピン政府は2020年までに再生可能エネルギーを用いた電力の比率を40%まで高めようとしている。太陽光などの再生可能エネルギーに支えられて、電化率も高まっていくだろう。
【修正履歴】 記事の掲載当初、本文p.2の第3段落で「石炭、天然ガスについで再生可能エネルギーが3位(26%)に付けた」としておりましたが、これは「石炭についで再生可能エネルギーが2位(26%)に付けた」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです(2017年3月27日)。
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