送配電投資を抑えて再生可能エネルギーを増やす、ポーランドで先進実証:エネルギー管理(2/2 ページ)
2020年に再生可能エネルギー比率15%を目指しているポーランド。その実現に向けた送配電設備への投資コストが課題となっている。そこでNEDOとポーランド・エネルギー省は、設備投資を抑制しながら再生可能エネルギーの導入拡大を目指すスマートグリッドの実証事業を実施する。日立製作所や日立化成、三井住友銀行などが参画する。
系統状態をシミュレーション、過負荷を防ぐ
日立製作所はPSEとEOP、EWと共同で送電線への過負荷防止のための系統安定化システムの実証を行う。系統安定化システムは常に電力系統からのオンライン情報を基に演算を行い、事故が発生した場合の系統状態をシミュレーションした上で対策を立案する。また、実際の事故発生時には、オンライン事前シミュレーションの結果に従って自動制御することにより、送電線へ過剰な負荷が掛かることを防止する。
日立化成はEWと共同で風力発電に対応したリチウムイオン電池を搭載したハイブリッド蓄電システムの実証を進める。高出力のリチウムイオン電池と大容量の鉛蓄電池を組み合わせることにより、高性能と低コストを両立させ、風力発電の短周期変動緩和、周波数制御用予備力の提供などの機能をもつハイブリッド蓄電システムを構築する。
さらに、日立製作所と日立化成、三井住友銀行は系統安定化システムおよび蓄電システムのビジネスモデルとその普及の可能性を検討していく。NEDOは同省とこれら関連企業と共に実証事業を推進する方針だ。
実証事業では、日本の先進的な系統安定化技術の活用に加え、リアルタイムに風力発電の出力を抑制する制御技術や蓄電システムなどを導入することにより、ポーランドでの再生可能エネルギーの導入拡大と、電力インフラへの設備投資の抑制、電力系統の安定化を同時に実現する系統安定化システムの構築を目指す。また、日立製作所と日立化成は、このビジネスモデルの欧州地域への展開を検討している。
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