フライホイールと蓄電池、アラスカの街を照らす:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
大規模風力発電所の電力を利用して孤立した都市の電力を得る。このような事例では、急速な電力変動を蓄電池単体で吸収するよりも、フライホイールを組み合わせた方がよい場合がある。スイスABBがアラスカの電力事業者と共同でハイブリッド蓄電システムを立ち上げた。
コンテナ型で設置しやすい
現地に設置する設備を3本のコンテナに収めた。ABBはマイクログリッドや蓄電設備向けに必要な機器を自在にコンテナに格納できる「PowerStore」シリーズを展開しており、これを用いた(図3)。
今回の事例では「3本のコンテナを用いた。1つは蓄電池本体。もう1つは蓄電池用の電力変換器(PCS:Power Conversion System)、3本目はフライホイールとPCS」(ABB)。
ハイブリッド蓄電池システム全体を同社の「Microgrid Plus Control System」が管理する。フライホイールと蓄電池の間の最適なエネルギー貯蔵バランスを決め、リモートメンテナンス機能を提供する。
マイクログリッドの最先端アラスカ
アラスカ州の面積は日本の4.5倍であり、米国最大(図4)。だが、人口は74万人と3番目に少ない。さらに人口の4割が最大都市のアンカレッジに集中している。残りの人口はアンカレッジから内陸部に伸びる鉄道沿線「The Rail Belt」に多い。
このような環境であるため、遠隔地や離島には早くからマイクログリッドの導入が望まれていた。系統電力を張り巡らす手法では送配電コストが高くつきすぎ、ディーゼル発電では発電コストを抑えることができないからだ。
2014年、フライホイールと蓄電池を組み合わせたマイクログリッドをABBとして世界で最初に導入したのは、アラスカ州南部のKodiak島。風力発電所(図5)とフライホイール、蓄電池(2MW)を組み合わせたシステムであり、今回のプロジェクトの原型ともいえる。
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