固体酸化物形燃料電池とガスタービンを組み合わせた複合発電システムの実証開始:蓄電・発電機器
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、日本特殊陶業を助成先として円筒形の固体酸化物形燃料電池(SOFC)とマイクロガスタービンを組み合わせた複合発電システムの運転を開始した。
2017年の市場導入に向け進む実証
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、日本特殊陶業を助成先として円筒形の固体酸化物形燃料電池(SOFC)とマイクロガスタービンを組み合わせた「加圧型複合発電システム」を愛知県小牧市の同社小牧工場内に設置し、運転を開始した。
水素などを燃料とし、高いエネルギー効率を持つ燃料電池は、エネルギー消費量や環境負荷の低減に大きく貢献することが期待されている。そのため燃料電池分野の市場拡大に向けて、業務用燃料電池の適用が望まれており、経済産業省が策定した「水素・燃料電池ロードマップ」で2017年の市場導入が目標に掲げられている。
SOFCは高温作動で発電効率が高く、環境負荷低減への寄与が高いといわれており、マイクロガスタービンとの複合発電でさらに発電効率を上げることが期待される。
こうした背景のもと、NEDOでは業務用のSOFCシステムの実証試験を実施中である。導入効果の検証と実用化へ向けた課題抽出を行うことで、SOFCシステムの開発を加速することを目的としたプロジェクトに2013年度から取り組んでいる。
日本特殊陶業は、加圧型複合発電システムの運用効率や耐久性などの検証を行い、コスト低減や量産に向けたノウハウなど課題を探る。同システムで発電した電気や発生した蒸気は、同社の小牧工場(愛知県小牧市)内の生産設備や空調に使用する予定だ。
同システムのサイズは3.2×12.0×3.5m。定格発電出力は250kW級、送電端効率は55%である。燃料は都市ガス(13A)という(実証結果をふまえて、最終仕様を確定)。
円筒形のSOFCは、日本特殊陶業が2014年6月に三菱日立パワーシステムズと円筒セルスタックの量産に向けた業務提携を締結。三菱日立パワーシステムズの持つ円筒セルスタックの開発、設計、製造技術と日本特殊陶業の保有するセラミックスの量産技術を融合させることで、本格的な量産へ生産技術を共同で確立することを目指す。日本特殊陶業は、今回の実証試験を通してSOFCの実用化をさらに進めていく方針である。
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