容量はリチウムイオン電池の15倍、超高容量の「空気電池」を開発:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
現在主流のリチウムイオン二次電池を超える次世代電池として期待されているリチウム空気電池。物質・材料研究機構の研究チームは、リチウムイオン二次電池の15倍の容量を持つリチウム空気電池の開発に成功した。空気極にカーボンナノチューブを利用したのが特徴だ。
CNTで容量15倍を実現
しかし、研究チームが空気極材料として不織布状のCNTシートを用いたところ、過酸化リチウムの析出は制限されず、シートを押し広げて大量に析出し続けるという結果を得られた。CNTシートの厚さは当初の200µmから3倍の600µmまで膨らむなど、極めて強力な反応機構の存在が示唆されたという。
一方、過酸化リチウムの分解、つまりは充電を行うと、CNTシートは析出物が消えて元の厚さに戻りる。研究チームは「このような巨大な体積変化が可能なのは、CNT特有の強靭さと柔軟さの賜物である」と分析している。
研究チームはこの成果を踏まえ、現実的なセル形状において、単位面積当たりの蓄電容量として30mAh/cm2という極めて高い容量のリチウム空気電池を開発することに成功した。空気極材料にCNTを用い、空気極の微細構造などを最適化することで実現した。これは従来のリチウムイオン電池の約15倍に相当する容量だという。
研究チームは今回の成果について「巨大な容量の実現には、カーボンナノチューブの大きな比表面積と柔軟な構造が寄与していると考えられる。また、このような巨大容量が得られたという事実は、従来の考え方では説明が困難であり、リチウム空気電池の反応機構の議論にも一石を投ずる可能性がある」と述べている。
今後、実用レベルの高容量リチウム空気電池システムの開発を目指す。このため、セルを積層したスタックの高エネルギー密度化を進めるとともに、空気から不純物を取り除く研究などにも取り組んでいく予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
空気で発電「亜鉛電池」、家電が直接つながる
あらかじめ充電しておかなくとも非常時に利用できる電池が注目を集めている。先行するのはマグネシウム空気電池。これに対抗する「空気亜鉛電池」が2016年5月にも登場する。水を使わずに発電し、家電用のコンセントを外付けで備えた。性能はリチウムイオン電池の6倍、マグネシウム“硫黄”二次電池を開発
山口大学 大学院理工学研究科の研究チームは、理論上、現在利用されているリチウムイオン電池の約6倍の電気容量を持つマグネシウム電池を開発した。電気自動車の走行距離拡大などへの貢献が期待できるという。EV普及の起爆剤、性能5倍のブレークスルー蓄電池が試作段階へ
NEDOは2016年度からリチウムイオン電池に代わる革新型蓄電池の開発に向けた新プロジェクトに着手する2030年にガソリン並みの走行性能を実現する普及価格帯電気自動車の実現を目標に、2020年度中までに容量5Ah級の新型蓄電池の試作と検証を行う計画だ。リチウムを超える「アルミニウム」、トヨタの工夫とは
電気自動車に必要不可欠なリチウムイオン蓄電池。だが、より電池の性能を高めようとしても限界が近い。そこで、実質的なエネルギー量がガソリンに近い金属空気電池に期待がかかっている。トヨタ自動車の研究者が発表したアルミニウム空気電池の研究内容を紹介する。開発ポイントは、不純物の多い安価なアルミニウムを使うことだ。