世界記録の効率16.2%、太陽光で水素製造:蓄電・発電機器
太陽光を利用して水素を製造できるデバイスの研究開発が進んでいる。米NREL(国立再生可能エネルギー研究所)の研究グループは、これまでの世界記録を2.2ポイント上回る効率16.2%のデバイスを開発した。
米NREL(国立再生可能エネルギー研究所)の研究グループが、太陽電池を利用した水素製造の効率で世界記録を更新した。これまでの14%を2.2ポイント上回る16.2%を記録したという。
これまでの世界記録だった14%は、ドイツ研究センターヘルムホルツ協会の組織であるHelmholtz-Zentrum Berlin(HZB)、イルメナウ工科大学(TU Ilmenau)、フラウンホーファーISE(Fraunhofer ISE、太陽エネルギーシステム研究所)、カリフォルニア工科大学(Caltech)の混成チームが2015年に記録した。
利用したのはIII-V族半導体(III族元素とV族元素を用いた半導体)と呼ばれるタンデム構造の太陽電池だ。変換効率は14%は当時、NRELが持つ12.4%という世界記録を17年振りに打ち破る成果だった。
今回、その世界記録を更新したNREL。利用したのはNRELが開発した反転変性多接合(IMM)太陽電池だ。従来のヒ化ガリウム(GaAs)層をインジウムガリウム砒素(InGaAs)に置き換え、デバイスの効率を大幅に改善することに成功した。また、デバイスの上に非常に薄いアルミニウムインジウムリン(AlInP)の「窓層」を堆積させ、次にGaInP2の第2の薄層を堆積させた。これにより腐食性電解液からセルを保護し、効率の低下を防ぐことができるという。
NRELでは、こうした太陽光を利用して水素を製造できるデバイスが普及するためには、水素の製造コストを1kg当たり2ドルまで下げる必要があると述べる。この目標に向けて今後も変換効率の向上や、デバイス寿命の向上に取り組むとしている。
なお、今回の成果は科学誌「Nature Energy 」のオンライン版に2017年3月13日(現地時間)に掲載された。
関連記事
- 人工光合成の効率を100倍以上に、新しい薄膜形成手法を開発
太陽光と水とCO2を使い、酸素や水素、有機物などの貯蔵可能なエネルギーを人工的に生成できる技術として注目されている人工光合成。富士通研究所はこの人工光合成において、酸素の発生効率を100倍以上向上させる新しい薄膜形成プロセス技術を開発した。人工光合成の実用化課題である効率の改善に寄与する技術として期待がかかる。 - 人工光合成の新機軸、二酸化炭素からペットボトルを作れるか
人工光合成の目的は、二酸化炭素と水から有用な化合物を作り出すこと。研究目的は大きく2つある。1つは高い効率。もう1つは狙った物質を作ることだ。東芝は2個の炭素原子を含む有用物質を作る実験に成功。太陽電池から得た電力を用いて、二酸化炭素と水からペットボトルの原料物質を合成した。 - 植物を超えたか「人工光合成」、太陽電池技術も使う
東芝は2014年12月、人工光合成の世界記録を更新したと発表した。太陽光のエネルギーのうち、1.5%を化学エネルギーに転換できたという。これまでの世界記録を1桁上回る成果だ。火力発電所の排出する二酸化炭素を分離回収する技術と、今回の成果を組み合わせることが目標だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.