太陽光発電物件に欠如する図面設計という問題:太陽光(3/3 ページ)
太陽光モジュールや電気系統機器の保守点検にとって欠かせない、設備全体の配置図や電気系統の全体構造が明記された「図面」が存在しないという現状。その背景・原因とともに、法制度の必要性について考えます(この記事は「O&M Japan」からの転載記事です)。
責任の範囲、管轄領域の線引きを明確に
メンテナンスを想定した図面がない、製品自体が保守点検作業を考慮した構造設計になっていない。今、太陽光発電業界ではこうした状況が当たり前になっており、このような状況の中で、現場の作業員は様々なO&M作業を手探りで行わなければなりません。このようなメンテナンスでは二次災害を引き起こしかねません。これは安全面や作業効率だけでなく、収益面などビジネス的視点から見てもO&M業界にとって非常に大きな問題です。
こうした状況については、行政側も協会や団体もよく理解しているのですが、「施工開始時の施工図面提出の義務化」などの法制化、ルール作りに関しては今のところ目だった動きがありません。
こうした業界全体の法整備に関する問題は、そもそも太陽光発電設備が「電気工作物なのか、建築・構造物なのか」「どこまでが経済産業省の管轄で、どこまでが国土交通省の管轄なのか」「どこがメーカーの責任でどこが販売店や施工業者の責任か」(業務範疇)といったことが非常に曖昧になっているということも関係しています。すべてにおいて責任範囲が曖昧なのです。これは太陽光発電業界、特にO&M業界における根本的かつ深刻な問題です。
太陽光発電事業におけるO&M事業は、まだまだ始まったばかりの歴史の浅い事業です。したがって、業界全体の知見も少なければ、体制もまだまだ確立されていません。それにも関わらず、各々が勝手にビジネス化して自分たちの事業を展開しているのです。これはO&M業界の行く末を考えると非常に懸念される状況と言わざるをえません。
行政、団体・協会、メーカー、発電事業者、販売・施工評者、O&M業者が互いに連携・協力しながら、O&M業界の健全な発展のためにもっと積極的に、ガイドライン作りと法整備を進めていく。私たちには今、そうした意思と姿勢、そして行動が必要とされています。
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