KDDIと中部電力、LPWAを活用したIoT事業創出へ 中小企業のパートナーを募集:エネルギー管理(2/2 ページ)
KDDIと中部電力などは、中小企業の事業創出を目的としたIoTビジネスパートナーの募集を開始した。LPWAネットワークを活用したサービスやビジネスアイデアを募集し、共同で実証実験を行う。
離島や山間部の自動検針の実用化へ
LPWA導入に関する取り組みは、他でも活発化している。2017年3月にはKDDIや京セラコミュニケーションシステム(KCCS)など4社が、兵庫県姫路市水道局の協力のもと、SIGFOXを活用した自動検針システムの導入、実用に向けた準備を進めると発表した。
SIGFOXはフランス企業が提供するIoTネットワーク規格。日本国内ではKCCSが事業者となり、国内でサービスを提供している。欧州を中心に32カ国で1000万デバイス以上で利用されており、2018年までに60カ国でのサービス展開を目指しているという。
水道業務における難検針対策では、免許不要な微弱な電波を利用した発信機を対応する水道メーターに設置し、至近距離から無線対応ハンディーターミナルにより電波を受信する方式が用いられてきた。しかし離島や山間部などは、現地まで行くこと自体の負荷が大きい。LTEなどセルラー回線を用いて自動化することも可能だが、通信費用などの運用コストや機器の電池寿命などが大きな課題となってしまう。
こうした理由から、4社は国内で既にサービスの提供体制を整えているSIGFOXを活用することで、離島や山間部などにおいて水道検針を自動化することを目指す。またガス業界も同じ課題を抱えているため、ガス検針の自動化も併せて取り組むとした。
環境発電に基づくLPWAで、スマート農業を推進
2017年4月25日にはJAふくしま未来が、NTT東日本の圃場(ほじょう)センシングソリューション「eセンシング For アグリ」を果樹の防霜対策として導入した。同ソリューションでは温度や湿度、照度などのセンシングデータをNTT東日本のストレージサービスに自動収集し、スマートフォン用アプリやPCを用いて“見える化”する。
センシングデータを受信機に送信する際に、エネルギーハーベスティング(環境発電)に基づくLPWAを利用して、無線通信を行っているという。
JAふくしま未来では果樹の栽培において、大きな被害をもたらす霜の対策に、降霜時の危険温度に達する前に果樹園地内で燃焼材を燃やし、温度を上昇させる取り組みを行ってきた。毎年果樹の開花期となる4月には防霜対策本部を設置。霜注意報が発令されると職員など約60人が、福島地区に点在する56カ所の観測地温度を夜明けまで観測していたとする。その際に発生する人的負担が課題となっていた。
自動化も検討されてきたが、観測装置に電源が必要になることや、観測データの送信にモバイル回線を利用すると通信コストが掛かることから、導入を見送っていた。同ソリューションはモバイル回線が不要で、環境発電(今回の場合は小型の太陽光パネル)によって電源も要らないため、これらの課題を解決することが可能とした。
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