未利用バイオマスを安定した固体燃料に変換、IHI実証へ:自然エネルギー
IHIはパーム由来の未利用バイオマスを原料とした、カーボンニュートラルのバイオマス燃料製造に関する商用実証に取り組むことを発表した。サンプル出荷を2017年度後半に開始する予定だ。
テストプラントを商用実証水準に拡張へ
IHIは東南アジア地域に多く存在するパーム由来の未利用バイオマスを原料とした、火力発電に適用可能なカーボンニュートラルのバイオマス燃料製造に関する商用実証に取り組むことを決定した。マレーシアで稼働中のテストプラントを商用実証水準に拡張する計画であり、燃料サンプルの出荷を2017年度後半に開始する予定だ。
燃料の供給安定性や優れた経済性、長年の運用実績による高い信頼性により、石炭火力発電は今後も国内の重要なベースロード電源としての役割を期待されている。この石炭の代替燃料としてカーボンニュートラル(ある生産や活動を行う際に、CO2の排出される量と吸収される量が同じである状態のこと)であるバイオマスを活用した、環境負荷低減の実現を目指すさまざまな取組みが国内外で注目されている。
しかし、マレーシアとインドネシアで広く生産されているパーム油の搾油過程で大量に発生するEFB(Empty Fruit Bunch/パームヤシの空果房)は腐敗しやすく、水分や灰分、塩分も多いため、その大部分は未利用なままで廃棄されているのが現状だ。
IHIは未利用のバイオマス資源であるEFBの有効利用を促進するため、ボイラメーカーとしての知識や技術をベースに、微粉炭焚石炭火力発電所やCFBC(Circulating Fluidized Bed Combustion、循環型常圧流動層)ボイラで使用可能なレベルまで改質し、安定した品質のカーボンニュートラルな固体バイオマス燃料(EFBペレット)に変換する手法を確立した。現在マレーシア国内でEFBペレットを製造するテストプラントを稼働させており、2017年度後半頃からのサンプル出荷を予定している。
IHIは石炭火力発電所での木質バイオマス高比率混焼や、発電設備の高効率化、CO2回収技術の開発などに加え、カーボンニュートラルなバイオマス燃料を提供する今回の取組みを通じて、火力発電設備から排出されるCO2低減に貢献していく方針だ。
関連記事
- 「竹はバイオマス発電に不向き」を覆す、日立が燃料化技術を開発
日本国内に豊富に存在するものの、ボイラーで燃焼させると炉内に「クリンカ」という溶岩を生成してしまうなどの特性から、バイオマス発電の燃料には不向きとされている竹。日立はこうした竹の性質を、一般的なバイオマス燃料と同等の品質に改質する技術の開発に成功した。 - 東京の住民に群馬で作ったバイオマスの電力を、40世帯を対象に5月から供給
東京都の世田谷区は群馬県の川場村と連携して、バイオマス発電所の電力を区民に販売する。川場村で4月に運転を開始する予定のバイオマス発電所が対象で、約40世帯の購入者を世田谷区内で募集中だ。小売電気事業者のみんな電力が販売会社になって、従量料金の単価が一律のプランで提供する。 - 原子力の地にバイオマス発電が拡大、木材と下水から電力を作る
福井県でバイオマス発電の導入プロジェクトが相次いで始まった。林業で発生する用途のない木材や下水の汚泥を処理する時に生まれるバイオガスを燃料に利用する。風力発電や小水力発電の取り組みも広がり、停止中の原子力発電所から離れた場所で再生可能エネルギーの電力が増えていく。 - 地域密着型のバイオマス発電が拡大、太陽光の買取価格は下がり続ける
2016年は再生可能エネルギーの流れが大きく変わり始める。これまで急速に伸びてきた太陽光発電は買取価格の低下や出力制御の対象拡大によって開発計画が減少する見通しだ。地域の資源を活用したバイオマス発電が有利な条件をもとに拡大する一方で、風力・中小水力・地熱発電には課題が残る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.