専用の電力線で非常時に電力供給、ビルと地域のBCP対策を強化:電力供給サービス
複数の建物をつなぐ専用の電力線を敷設し、非常時の電力を供給する国内初のBCP対策サービスが登場した。東京電力ホールディングスが提供するサービスで、初の採用事例として住友商事が計画する「(仮称)神田錦町二丁目計画」への導入が決まった。
東京電力ホールディングス(東電HD)と東京電力エナジーパートナー(東電EP)は、特定エリア内の複数の建物を専用電力線つなぎ、非常時に電力融通する「プレミアムグリッドサービス」が、住友商事が計画する「(仮称)神田錦町二丁目計画」に導入されると発表した。
プレミアムグリッドサービスは、特定エリア内の複数の建物に対し、予備の電力線を新たに敷設する。一時的な停電などが発生した場合に、この電力線を活用して電力を供給するサービスだ。さらに停電が長時間継続する場合には、既存の送配電ネットワークから切り離し、独立したネットワークを構築してエリア内に設置する非常用発電機の電力を各建物に融通する。
このサービスを活用することで、大規模な自然災害でも事業活動をいち早く再開・継続するBCP対策の強化につながると同時に、エリア周辺の防災機能強化にも貢献するとしている。
こうした電力ネットワークを活用したBCP(事業継続計画)対策用エネルギーサービスは国内初だという。なお、サービスの運用においては、東電EPの100%子会社である日本ファシリティ・ソリューションが非常用発電機と受変電設備の設置および運営管理を行う。
住友商事が計画する神田錦町二丁目計画は、東京都千代田区神田錦町二丁目の東京電機大学神田キャンパスと神田警察署跡地の約1ha(ヘクタール)の敷地に、地上21階、地下1階建てのオフィスビルを開発するプロジェクトだ。総事業費は1000億円超で、2017年5月1日に着工し、2020年3月末の竣工を予定している。
住友商事は、プレミアムグリッドサービスを利用し、し非常災害時に複数の周辺ビルへ電力を供給・融通する。災害時には建物の一部を地域に開放し、周辺の帰宅困難者を最大850人を受け入れる計画だ。
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