東京五輪から本格化、水素関連市場は2030年度に32倍へ:蓄電・発電機器
調査会社の富士経済が水素関連市場の調査レポートをまとめた。水素関連市場は「東京オリンピック・パラリンピック」が開催される2020年度頃から本格化する見込みで、2030年度の市場規模は2015年度比で32.1倍の5903億円に拡大すると予測した。
日本政府が2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」に向けて推進している水素エネルギーの利活用。調査会社の富士経済は、水素インフラ、水素燃料など、水素燃料関連の国内市場を調査し、今後の展望をまとめた。
調査によると水素燃料、水素製造装置、水素輸送関連、水素ステーション、簡易型水素ステーションなどを合計した水素関連の国内市場は、2015年度に184億円。現状、その大半を占めているのが商用整備が始まった水素ステーションだ。
富士経済の調査では、水素ステーションの増設および燃料電池車(FCV)の普及、水素燃料の大規模輸入や国内流通の増加、水素発電設備の導入などにより、水素関連市場は2020年度頃から本格化する見込みとしている。2030年度の市場規模は、2015年度比で32.1倍の5903億円に拡大すると予測した。
水素ステーションの普及について、政府は2015年度末までに100カ所という目標を掲げていた。しかし、実際の整備は遅れている状況にある。調査では、2015年度に経済産業省の「水素供給設備整備事業」の助成を受けた商用ステーションの開所件数が47件、「地域再エネ水素ステーション導入事業」の支援を受けた小型の水電解型水素ステーションが4件で、合計51件。2016年度は「地域再エネ水素ステーション導入事業」よる開所件数は増加するものの、商用ステーションによる開所件数が大幅に減少することで、合計30件にとどまる見込みとした。
今後の見通しについては、地域再エネ水素ステーション導入事業の支援利用は自治体が多くFCVの購入と併せた導入が増えており、短期的には小型水電解ステーションの開所件数の増加が続くと予測。一方、水素供給設備整備事業では交通量が見込める幹線沿いという立地制約や火気離隔距離の確保、資格を持った運営人員の確保などが商用ステーションの普及阻害要因となっており、短期的には2016年度と同程度の開所件数で推移する見込みとしている。
長期的にはFCフォークリフトやFCバスなど、商用FC車の販売本格化が水素ステーションの需要拡大に寄与するとしている。FC車全体の2030年度の販売台数は年間20万台以上、普及台数は90万台以上になると見込む。これにより水素ステーションの需要が拡大し、2030年度の水素ステーション開所件数は220件、市場規模は387億円まで拡大するとした。
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