ブロックチェーン活用した電力取引、福島で実証が始まる:電力供給
エナリスと会津ラボは、福島県が実施する「再生可能エネルギー関連技術実証研究支援事業」に採択され、ブロックチェーンを活用した電力取引などの実証事業を福島県内で行うことを発表した。
ブロックチェーンの有効性を検証
仮想通貨(ビットコイン)の中核技術として広く知られているブロックチェーン。二者間の取引を効率的で検証可能な方法で記録できる分散台帳で、海外では電力データをブロックチェーンに記録し、電力取引に活用する試みが始まっているという。
国内でも同様な動きが進み始めている。エナリスと会津ラボは2017年6月、福島県が実施する「再生可能エネルギー関連技術実証研究支援事業」に採択され、ブロックチェーンを活用した電力取引などの実証事業を福島県内で行うことを発表した。
実証では、福島県内の一般家庭に会津ラボが開発した「スマートタップ」を設置。同製品はブコンセントに接続した電気機器の消費電力量を計測し、スマートフォンアプリに表示する。電力データをブロックチェーン上に記録するハードとソフトで構成されており、電力需給の逼迫(ひっぱく)時には赤外線コントロールやコンセントの電源を切って、電力使用量をコントロールすることが可能だ。
スマートタップで取得した各家庭の電力データは、分散型台帳技術ブロックチェーン基盤「Hyperledger Iroha(以下、Iroha)」に記録してモニタリングを行う。そこで模擬の節電要請を行い、家電を遠隔操作することによって電力を抑制・遮断する。電力需給が逼迫する中で、家電を制御することで起こる事象や、分散台帳の整合性確認に要する時間が電力取引に与える影響といったブロックチェーンの有効性を実証するという。
また電力データを活用した「見守り」などのサービスも提供し、利用開始に必要な一連の手続きをブロックチェーン上で行う仕組みも検証する。実証期間は2017年6月から2018年2月末まで。会津大学が技術実証アドバイザリーとして参画する。
なおIrohaはブロックチェーンの国産オープンソースソフトウェアで、ブロックチェーン技術普及に向けた共同研究プロジェクト「Hyperledger」に受諾されている。これはIBMの「Fablic」とIntelの「Sawtooth Lake」に続き、世界で3番目のことだ。
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