太陽光の電力を自営線で供給、相馬市で再エネ地産地消プロジェクト:エネルギー管理
福島県相馬市で自営線を利用した再生可能エネルギーの地産地消プロジェクトがスタートする。IHI、相馬市、パシフィックパワーが特定送配電事業と小売電気事業を行う新会社を共同設立した。市内の太陽光発電所で発電した電力を新会社が購入し、自営線で相馬市が所有する下水処理場に供給する。
IHIは、福島県相馬市、パシフィックパワーと共同で、特定送配電事業および小売電気事業を行う、そうまIグリッド合同会社を設立した。自営線を敷設し、相馬市内において太陽光発電電力の地産地消などを行うスマートコミュニティー事業を展開する。新会社の資本金は990万円で、IHI85%、相馬市10%、パシフィックパワー5%の比率で出資した。
事業エリアは中核工業団地東地区内の5万3000m2で、IHIが新たに出力1.6MWのメガソーラーを建設する。この発電所で発電した電力をそうまIグリッド合同会社が「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」を利用して購入。その後同社が事業エリア内にある相馬市が管理する下水処理場に、自営線を使い公道を超えて電力供給を行う。
IHIが新設する太陽光発電は蓄電池を併設し、出力変動の緩和を行う。発電した電力は基本的に下水処理設備で利用されるが、余剰電力が発生した場合には電気ボイラーで熱に転換して下水汚泥乾燥用熱源に利用したり、水電解設備で水素製造に活用したりする。系統への逆潮流は行わず、太陽光発電の電力を全て地域内で消費する狙いだ。
そうまIグリッド合同会社は、下水処理場の他、市庁舎や復興交流支援センターなどの施設のエネルギーを統合的に管理するCEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)の構築と運用も行う。このCEMSを通し、既設の太陽光発電所の電力や卸売市場も活用しながら、再生可能エネルギーの地産地消と地域主導の新たな自律事業モデルの確立を目指す。
IHIと相馬市は2015年度復興庁公募の「新しい東北」先導モデル事業としてスタートした「水素を活用したCO2フリーの循環型社会創り」において、太陽光発電の余剰電力を有効利用して全量地産地消する仕組みや、余剰電力で製造した水素を利活用するスマートコミュニティー事業モデルの構築を目指し、2015年1月に共同研究を開始。今回のそうまIグリッド合同会社の設立はこの取り組みの一環となるもので、小売電気事業開始を2017年度後半から、特定送配電事業を2018年度から開始する計画だ。
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