「データつなぎ、価値を生む」 富士通が挑む省エネ:エネルギー管理(2/2 ページ)
2016年4月の電力小売全面自由化に伴い、事業部ごとに推進していたエネルギー関連ビジネスをまとめて、エネルギーICTソリューションとして統合した富士通。日本工営と協業して進めるクラウド型EMS「Enetune-BEMS」を用いたサービスを中心に、省エネ化に向けた取り組みを聞いた。
補助金の申請支援も推進
福島県伊達市では、約45カ所の公共施設にEnetune-BEMSを導入した。東日本大震災以降、市内の小中学校に新しくエアコンの導入を行ったが、電気代が震災前に比べて30%程度上がったことが背景にある。富士通はEnetune-BEMSによるエネルギーの見える化に加えて、ピークカットなど電力使用に関する運用の改善を行い、施設全体で10%以上のエネルギー使用量の削減を実現した。
食品スーパーに導入した事例では、店舗設備のメンテナンス項目見直しや商品陳列方法の見直しなどを行った。LED照明やナイトカバー、インバーターなど省エネ設備を導入している店舗においても、約10%の消費電力量削減につながったとする。
山田氏は「食品スーパーは省エネ化が進んでいる店舗が多い。そのような中で、ファンの汚れの清掃やインバーターの故障検出により、年間約300万円の電気料金削減に成功した。顧客からも『思っていた以上の効果が得られた』と評価を頂いた」と語る。
省エネ化サービスの初期費用は、センサー設置などの環境構築と省エネ計画作成などで500万円から。その他、Enetune-BEMSやコンサルティングのランニングコストを要する。山田氏によると、25か所までの計測にかかる基本料金は月額約8000円という。
また富士通はエネルギー管理支援サービス事業者(エネマネ事業者)として、経済産業省が実施する省エネルギー投資促進に向けた補助金の申請支援も推進している。2017年度中にはコンソーシアムを設立し、エネマネ事業を支援する体制を構築予定。これらの付加価値により、2020年度までに100件以上の受注獲得を目指すとした。
VPP関連技術にも注力
富士通ではその他、太陽光発電監視サービス「Venus Solar」の提供やVPP(バーチャルパワープラント)技術の取り組みも進めている。今田氏によると、2017年4月に施行された改正FIT法に伴い、O&M事業者にVenus Solarの引き合いが増えているという。
「データ活用ビジネスにおいて、エネルギー分野はこれから市場が形成されていくため、当社もまだ見えていない部分はある。しかし生まれてきたデータをつなぐことで、新たに見えてくる価値があると思うので、それを生かしたソリューションの提供に取り組んでいきたい」(今田氏)
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