住宅太陽光発電、作業時の転落事故を防ぐために:太陽光(3/3 ページ)
住宅屋根の上での施工・メンテナンス作業時に発生する作業員の転落事故が後を絶ちません。転落事故防止策として有効な「安全帯」装着の必要性と、適正な製品選びのポイントについて解説します(この記事は「O&M Japan」からの転載記事です)。
早急に整備すべき「安全基準」
現在、こうした「安全帯」使用の問題も含め、太陽光設備施工時、O&Mにおける安全対策にはさまざまな課題が山積しています。最も大きな問題は、安全対策に関して「明確なルールが定められていない」ということです。施工業者やO&M業者は、一般的な工事業の作業員として安全衛生法などには準拠して作業を行っているのですが、会社や作業員ごとにみな独自の方法・ツールを使って安全対策をとっており、安全基準が明確に定まっていないのです。また、中にはまったく安全対策をとっていない場合もあり、こうした安全基準の緩さ、曖昧さが作業時の事故発生のリスクを高めてしまっています。
このように、作業の安全に関する規定が中途半端になってしまっているひとつの要因として、太陽光発電における施工やメンテナンスが「電気事業分野の仕事なのか、建築事業分野の仕事なのか」が曖昧になっている、ということがあります。電気事業と建築事業では安全管理に関するルールや認可の基準、方法などが異なるからです。
そうした曖昧な部分を早急にクリアにして、太陽光発電事業にも明確な安全基準を定めることが急務であり、この基準整備はこれからのO&M事業の発展にも大きく関わってくる重要な課題と言えるでしょう。
今回お話した「安全帯」だけでなく、作業員が身につけるヘルメット、作業着、手袋、靴などの装備、はしご(スライダー)などの作業用器具や作業方法に関しても、安全のための明確な基準が定められていません。
一歩間違えば感電や転落による死亡事故にもつながる太陽光発電の施工とO&M関連作業。作業を請け負う会社や作業員自身が、自分たちの身の安全を守るために注意、工夫するだけでなく、国や業界全体がリードして明確な安全対策基準の整備を進めることが求められています。
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