HVが主流のエコカー市場、EV・PHVがシェアを追い抜くのはいつか:電気自動車
現在は電気とガソリンで走るハイブリッド車(HV)が主流のエコカー市場。一方、より環境負荷の低いプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)の市場投入も進んでいる。今後世界のエコカー市場はどのように推移していくのか、調査会社の富士経済が展望をまとめた。
富士経済はハイブリッド自動車(HV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)など、環境対応車の世界市場について各国政府の方針や各自動車メーカーの戦略を踏まえた調査を行い、その結果をまとめた。
HVの販売台数は2035年に2016年比2.5倍の458万台、PHVは同18倍の540万台、EVは同13.4倍の630万台に拡大すると予測。現状ではHVの市場規模が最も大きく、2025年頃までは環境対応車の中心になるとみられるが、PHVやEVが2025年以降急激に躍進し、2030年頃には3車種の市場規模は拮抗すると見通した。
エリア別の予測では、日本は特にHVの販売が好調な市場であり、当面も市場の主流となる。2035年には180万台が予測される。PHVは2020年以降市場の拡大が期待される。EVは航続距離の延伸、高速充電対応が市場拡大の起爆剤になると考えられるが、充電環境の整備やバッテリーのリサイクルなどが課題として残り、2035年における日本のEV市場は36万台規模とどまると見通しとした。
北米市場に大きな影響を与えるのが、「ZEV(Zero Emission Vehicle)」規制などの環境政策だ。米国で最大規模の自動車市場であるカリフォルニア州は、2018年モデルから規制を強化し、HVを環境対応車から外すことが決まっている。こうした環境規制の強化により、PHVやEVの販売台数が拡大すると予測した。
欧州市場は、環境規制に対応するため各社が高級車ブランドからのPHVの投入を計画しており今後の伸びが期待される。EVは航続距離の延伸と公共充電インフラの急速充電器の設置数が増加することで、需要の増加が見込まれるとした。
環境対応車市場を大きくけん引するのが、中国市場だ。購入時の手厚い補助金やナンバープレート給付制限政策によりPHVとEVの販売が大幅に拡大しており、特にEVについては最大の需要地となっている。
ナンバープレート給付制限政策は、都市部に高倍率の抽選に当たらなければ取得できないナンバープレートを、EVとPHVには優先的に発行する制度。現在は北京などで実施されているが、中国政府は今後その他の都市にも展開する見込みだ。このため2020年に国の補助金政策が終了しても、中国のPHV・EV市場は拡大が続くと予測した。HVも2020年に施行される燃費規制に対応して市場が拡大する見込みだ。
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