これからの太陽光発電、「デューデリジェンス」が事業の明暗を分ける:改正FIT時代の太陽光発電事業のポイント(2/2 ページ)
2017年4月から施行された改正FIT法。長期的な事業計画の策定や適切な運用保守が求めるようになるなど、太陽光発電事業を取り巻く環境は大きく変化した。こうした中で、今後の太陽光発電事業を成功させるためるには、どういった点に注意する必要があるのか。横浜環境デザインが解説する。
21円時代、今後さらに重要になる「デューデリジェンス」
これからの太陽光発電事業は、法的なチェックとともに建設地の詳細なデューデリジェンスも必要になってくる。以前、現地調査を行った島根県のある案件は、ほとんどが北斜面で、太陽光発電所建設に適した土地ではなかった。もし設置したとしても、影がかからないようにアレイ間の間隔を通常より空ける必要がある土地だった。また、工事に関しても土木工事が高額になることが予想されたため、収支の面から弊社が購入しEPCをおこなうことは断念した。
21円の買い取り価格で事業化を検討する場合、土木工事に掛かるコストについては、非常に厳しく見ていく必要がある。なぜならば造成工事はコストが読めない部分があるからだ。だからといって簡単に済ませてしまうと、後々大問題が発生するケースもある。発電所の建設は造成工事の内容や費用と、実際の売電収入のバランスを見ながら進めていく必要がある。
発電所を建設する土地には「山林」という地目が多いが、そのような土地の造成工事などは林地開発許可(森林法第十条の二)の基準に準じたものでなければならない。例えば元々生えている樹木は一定量残さなければならないし、木を伐採、抜根(ばっこん)した際に雨水が一気に流れださないよう、水の流れや量などを計算し、水路(側溝)や調整池、沈砂池の大きさを決めて造成を行う必要がある。
その場合、原則30年に一度の大雨に対処するような調整池の建設が求められ、造成費用はかさむことになる。
その他、土地の造成時の切土や盛土によって生じる法面(のりめん)も、崩れやすい砂質土だと角度を緩くすることで崩れにくくしなければならない。逆に粘性土や比較的硬い地質であれば地質に応じて角度を立ててもいいという基準がある。また、大きな斜面であれば一定の高さごとに小段をつける必要があり、土木工事は防災の面から非常に基準が厳しく、また設置レイアウトに大きく影響するので、建設前にさまざまな角度から検討する必要がある。
先日、造成中に斜面が崩れ、農地用水路を一時ふさぐというトラブルが発生した。これは盛り土の工事中に予想外の大雨が降り、斜面の途中から小規模な地滑りを起こし崩れてしまったというケースだが、土質に応じた工事中の防災対策が不十分であった。このケースのように事前にデューデリジェンスをし、工事計画をきちんと決め、市区町村や法令に準じた工事を行ったとしてもトラブルはつきもので、その現場に応じた災害対策と対応が必要なのである。
買い取り価格が21円になった今、建設しやすい条件の良い土地は少なくなり、これからの太陽光発電所は斜面地や造成が必要な土地への設置が多くなることは不可避である。それに伴い、建設前の土地のデューデリジェンスなど、“目利き”の重要度は増している。また、2016年に天災によって発生した太陽光発電所の水没やパネルの飛散などを受けて、経済産業省も太陽光発電所の保守点検の義務化など、いままでよりルールを厳しくしようとしている。
こうした経済産業省の動きもあるが、自然エネルギーの筆頭である太陽光発電をさらに普及・安定運用していくことは日本のエネルギー政策にとって急務であるので、既に建設された発電所に関しては点検メンテナンスの徹底を、建設前の発電所に関しては事前のリーガルチェックや土地のデューデリジェンスでリスクを回避し、日本のエネルギーに貢献できる安全な発電所をこれからも作り続けていくことが業界の使命だと考えている。
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