アンモニアを電子源に人工光合成、CO2からプラスチック原料を生成:蓄電・発電機器
京都大学の研究グループは、アンモニアを電子源に二酸化炭素(CO2)を光還元し、一酸化炭素を取り出す反応に高い活性を示す光触媒群を発見した。常温・常圧条件下で水素と一酸化炭素の合成ガスを容易に得る方法として期待できる成果だという。
京都大学工学研究科の研究グループは、アンモニアを電子源として二酸化炭素(CO2)を光還元し、一酸化炭素(CO)を取り出す反応に高い活性を示す光触媒群を発見したと発表した。CO2を光還元する場合には同時に水も光還元されるが、今回発見した触媒を用いると水の光還元はほぼ進行しないため、CO2から一酸化炭素のみを得ることができる。アンモニアからは無害な窒素のみ生成するため、常温・常圧条件下で水素と一酸化炭素の合成ガスを容易に得る方法として期待が持てる手法だとする。
エネルギー・環境問題が顕在化している現在、植物の光合成を模倣した人工光合成技術の確立は全世界的に注目を浴びている。CO2は各種の温室効果ガスの中で最も排出量が多く、地球温暖化に影響を及ぼす気体であるため、その削減や有効利用が求められている。しかしながら、CO2は非常に安定な直線型の分子であるため、別の物質との反応が難しいことで知られている。今回の研究では不均一系光触媒(固体光触媒)を用いて、アンモニアを電子源としてCO2の光活性化を行い、CO2から合成ガスの原料となるCOを高い濃度(約7500ppm)で得ることに成功した。
植物は水を電子源としてエネルギーを獲得し、CO2を糖へと変換している。この反応が光合成で、研究グループでは、これまで水を電子源としたCO2の光還元に活性を示す光触媒群を発見してきた。今回の研究では、アンモニアを電子源とすることにより、さらに容易にCO2を光還元することに成功したという。
光還元の結果、高濃度のCO(7500ppm)が生成されるが、これは今までに報告されている中で最も高い濃度となっているという。さらにアンモニアを電子源としたことで、水の場合に生成される酸素とは異なり窒素が生成するため、COと酸素を分離する必要がないことも利点のようだ。アンモニアは現在ハーバー・ボッシュ法で製造されているが、製造に必要な水素が水から安価に作られるようになれば、アンモニアの価格も下がることが予想される。
また、牛舎や豚舎などからの排水にもアンモニアは含まれており、今回の成果を応用すればCO2を吹き込むことによって排出・使用現場で人類に有用な化学品に変換できる可能性があるとしている。生成されるCOは一酸化炭素中毒に代表されるように有害な物質だが、同時に生活に必要な燃料・繊維・プラスチックなどの原料であり、化学産業に必要不可欠な化学品の一つと言える。
現在、大気中の二酸化炭素を削減する技術は二酸化炭素貯留(CO2 Capture and Storage、CCS)が一般的だ。今回の成果は、新たにCO2を化学品の基礎原料とする技術を発展させる鍵となる技術だと同研究チームは考えている。
これまでCO2の光還元における電子源はH2Oか有機物だったが、H2Oを電子源とするには現在のところ高いハードルがあるという。一方で有機物を用いると炭素源が複数となるため、本当にCO2から光還元されたものなのか疑義が出る可能性があった。今回の研究は無機物であるアンモニアを電子源として利用できることを見出したことにも意義がある。ただ、この反応に活性を示す光触媒では太陽光に含まれる可視光を利用できないため、今後は可視光でも駆動する光触媒の探索が課題となっている。
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