世界最大級のCO2フリー水素工場の開発がスタート、福島で2020年に実証へ:自然エネルギー
「福島新エネ社会構想」の一環として計画している、世界最大級のCO2フリー水素製造工場の開発が本格的にスタートする。「東京オリンピック・パラリンピック」が開かれる2020年度をめどに実証運転を行う計画だ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2017年8月1日、世界最大規模となる再生可能エネルギーを利用した1万kW(キロワット)級の水素製造工場を、福島県浪江町(なみえまち)に建設するプロジェクトを採択した。東北電力、東芝、岩谷産業の3社が、本格的にシステムの開発に着手する。「東京オリンピック・パラリンピック」が開かれる2020年度をめどに実証運転を行う計画だ。政府が掲げる「福島新エネ社会構想」が本格的に動き出す。
福島新エネ社会構想は「再エネの導入拡大」「水素社会実現のモデル構築」「スマートコミュニティの構築」という3つの柱で構成されている。水素社会実現のモデル構築を支えるのが、今回開発する世界最大級の水素製造工場だ。
水素製造工場の開発についてはNEDOが主導しており、2016年に公募した「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発」に採択された東芝、東北電力、岩谷産業の3社がこれまで設備の仕様・経済成立性などについて検討を進めてきた。2017年5月には福島県が浪江町を建設候補地として国に推薦することを決定。今回のNEDOの採択で正式に建設地および開発の開始が決まった。計画では太陽光発電を利用し、年間900tの水素を製造できるシステムの構築を目指す。
この事業では、再生可能エネルギーの導入拡大を見据えた電力系統の需給バランス調整(デマンドレスポンス)のための水素活用事業モデルおよび水素販売事業モデルを確立させることを目的としている。
市場での水素需要を予測する水素需要予測システムと、電力系統の需給バランスを監視制御する電力系統制御システムからの情報をもとに、水素エネルギー運用システムが水素製造装置などを含めた最適運用を行うことで、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの利用拡大を実現する。加えて、製造した水素の最適な利用までを含めた「福島モデル」の構築を目指す。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、福島県で製造した水素を、選手村のエネルギーや燃料電池車で活用する計画も進んでいる。今回、建設する水素製造工場はその供給源としても期待がかかる。
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