シリコンを上回る新記録、ペロブスカイト+Siの太陽電池:太陽光
ベルギーのIMECなどが、ペロブスカイトとシリコンを組みわせたのタンデム構造の太陽電池モジュールを開発。従来のシリコン太陽電池を上回る23.9%の変換効率を達成した。
次世代の太陽電池として実用化が期待されている、ペロブスカイト太陽電池。シリコン系の太陽電池より高い変換効率を実現できるポテンシャルを持ちながら、低い製造コストを実現できると見込まれているのがその理由だ。
ペロブスカイト太陽電池は、さまざまな光学的および電子的特性を実現するように設計できる特徴がある。そのため、シリコンセルのスペクトル吸収範囲を補うような特性に設計したペロブスカイト太陽電池やモジュールを組み合わせ、標準的なシリコン太陽電池の効率を高めるという手法も期待できる。
ベルギーの研究開発機関であるIMECとEnergyville、ドイツ、ベルギー、オランダにおける、薄膜太陽電池の研究開発コンソーシアムのSollianceは2017年8月、シリコン太陽電池の上にペロブスカイト太陽電池を積層した、開口面積4cm2のタンデム構造のモジュールを改良し、モジュール変換効率を23.9%を達成したと発表した。このタンデム構造のモジュールで、従来のシリコン太陽電池の変換効率を上回るのは、初の成果だという。
既にIMECは2016年にSollianceと共同で、4端子のタンデム構造を持つ裏面電極型の単結晶シリコンの上に、ペロブスカイトを積層したモジュールを発表している。このモジュールの開口面積も同じく4cm2だが、変換効率は20.2%だった。
今回はこのモジュールにさらなる改良を加えることで、同じ開口面積で変換効率23.9%を達成した。主な改良点は2つある。1つが従来とは異なる種類のペロブスカイト材料(CsFAPbIBr)を採用したことだ。これにより、ペロブスカイト太陽電池モジュールの変換効率を15.3%に向上させた。もう1つは、ペロブスカイトモジュールの上に反射防止膜を加え、さらにシリコン太陽電池セルとの間に屈折率整合液を挟み、積層構造の光損失を最小化できるよう工夫したことだ。
IMECによると、ペロブスカイトとシリコンセルの組み合わせには、まだ大きな伸びしろが残されている。理論上は30%を超える変換効率の実現が期待できるとしている。
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