海流発電の実用化へ前進、黒潮で30kWの発電に成功:自然エネルギー
IHI開発を進めている海流発電装置の実証試験が、鹿児島県沖で行われた。海中への設置や撤去に関する検証に加え、実際の黒潮を利用して想定通りの発電性能を確認することができたという。
IHIがNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業のもとで開発している100kW(キロワット)級の海流発電装置「かいりゅう」。このほど鹿児島県沖で実際の海流を利用した実証試験を行い、想定通りの性能を発揮できることを確認した。
日本の沿岸付近には、世界的でも有数のエネルギーを持つ黒潮などの強い海流が年間を通じて安定して流れている。かいりゅうは、こうした海流を再生可能エネルギーとして生かすことを目的とした発電装置だ。海底に設置するシンカー(おもり)と特殊なロープで水中に浮遊させるように設置し、海流で直径11mのタービンを備える2台の発電機を回転させて発電する。
実証試験は2017年7月25日から7日間、野間岬(鹿児島県南さつま市)沖の甑(こしき)海峡で、船舶でかいりゅうを曳航(えいこう)し、黒潮に模した水流を発生させて、海中での挙動を確認した。定格流速1.5m/秒で100kWの発電出力を確認することができた。
続いて8月12日から7日間、内閣府総合海洋政策推進事務局の海洋再生可能エネルギー実証フィールドに選定された鹿児島県十島村口之島沖の海域で、実際の黒潮を利用した実証試験も実施。水深約100mの黒潮海域で、かいりゅうの設置および撤去工事の施工と検証を行った。
発電に関しては、実際の黒潮海流の中で、水深約30〜50mに浮遊させたかいりゅうを、自律制御システムによって姿勢や深度を制御しながら、最大30kWの発電出力を得ることに成功。発電性能や浮体の安定性の検証などの試験も完了した。
NEDOとIHIは、今回の実証試験により、かいりゅうが想定どおりの性能を発揮することを確認できたとしている。発電性能だけでなく、海流特性や設置および撤去工事手法の精査などを含め、今後の実用化に向けて必要な実海域での試験データも取得できたという。
IHIは、今回の実証試験で得られたデータを今後の研究開発に活用し、かいりゅうの2020年以降の実用化を目指す方針だ。
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