燃料は食品排水の“油脂”、バイオマス発電車でどこでも再エネ供給:自然エネルギー
ティービーエムが飲食店や食品工場の排水から分離回収した油脂を、発電用燃料に改質することに成功。さらにその燃料を利用して発電できる「バイオマス発電車」も開発した。排水油脂から再生可能エネルギーを生み出す「フード・グリーン発電システム」の確立を目指すという。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とティービーエムは2017年9月、飲食店や食品工場の排水から分離した油脂を原料とする発電燃料の製造に成功したと発表した。さらに、この燃料を利用して発電できる発電機を搭載した「バイオマス発電車」も開発。今後国内の自治体イベントで実証試験を進め、2020年までに地域で回収した排水油脂から再生可能エネルギーを生み出す「フード・グリーン発電システム」の確立を目指す。
飲食店や商業施設、食品工場などの排水は、下水道法や水質汚濁防止法で規定されている基準以下の濃度で排水することが定められている。そのため事業者は、下水道や公共用水域へ汚水や油脂が直接流出することを防ぐ「グリース阻集器(グリーストラップ)」を設置している場合が多い。NEDOによると、グリーストラップで集められる主に動物性油脂で構成された排水油脂の賦存(ふぞん)量は、全国で年間31万tにのぼると推定されている。しかし、水分含有率が高く、不純物も多いといった理由から、産業廃棄物として焼却処分されていた。
店舗や施設の排水を浄化する独自技術を持つティービーエムは、2013年度からNEDOの「ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業」でトラップグリースを活用するバイオマス発電システムの開発を開始。このほど、排水から分離回収した動物性油脂を精製改質する技術開発を進めた結果、化学薬品を一切使用せず、副産物も出さずにトラップグリースを発電用燃料化することに成功した。
同時に開発したバイオマス発電車は、トラップグリースを原料とする燃料を利用可能な100KVA規模の発電機を搭載している。2017年9月10日には、埼玉県入間市が主催する自治体イベントで、電力供給を行う実証試験を行った。この実証は牛丼チェーン店などを展開する松屋フーズが協力し、店舗から排出される動物性油脂を原料とする燃料とバイオマス発電車で発電を行うというもの。発電した電力はイベント会場で、調理機器や電灯などの設備に供給する。
ティービーエムは今後も首都圏を中心に、自治体イベントでの実証試験を継続していく。排水浄化からグリーン電力を生み出すフード・グリーン発電システムの普及を推進し、首都圏での“エネルギー地産地消モデル”の確立を目指したい考えだ。
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