電車の回生電力をEVバスに超急速充電、さいたま市で実証へ:電気自動車
住友商事は電車の減速時のエネルギーが生む回生電力を、EVバスに急速充電するシステムの実証を実施する。
住友商事は、電車の減速制動時の物理エネルギーが生む回生電力を、電動バスに急速充電する「ゼロエミッション地域公共交通インフラ(電動バス)」の開発・実証事業を開始すると発表した。
同事業は、地域交通の低炭素化を進めるさいたま市、および埼玉高速鉄道の協力を得て実施する。従来回収することが難しかった電車の回生電力を蓄電池に充電し、その電力をパンタグラフ接触式充電器で電動バスに5分以内に超急速充電するシステムの開発を目指す。超急速充電は、従来のCHAdeMO規格などの30~50kWを上回る、200kW以上の充電方法を意味する。
今回の実証事業で利用する蓄電池は、事業の共同実施者である東京大学発ベンチャーのエクセルギー・パワー・システムズが開発を担当。住友商事は共同実施者の早稲田大学アカデミックソリューションとともに、電動バスの普及を阻害している課題の解消に向けた検証を行う。充電時間が長い、航続距離が短い、充電コストが高いといった課題を解消し、既存のディーゼルバスによる運行と同等以上の稼働率を確保できる交通インフラとして事業化を目指す方針だ。
2018年秋には埼玉高速鉄道「浦和美園駅」のバスターミナルに超急速充電システムを設置し、JR「さいたま新都心駅」とを結ぶ約10.9kmのルートを利用して、電動バスの実証運行を行う予定だ。
2020年にはさいたま市と連携し、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の会場間をつなぐゼロエミッション地域公共交通インフラとしての営業運行を目指す。また、首都圏の鉄道事業者・バス運行事業者向けをはじめ、全国主要都市にも展開していく計画だ。将来の事業展開については、住友商事の100%子会社である住商機電貿易と共同で取り組む方針としている。
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