インドの携帯基地局にEMSを導入、83%のディーゼル燃料削減に成功:エネルギー管理
電力網が不安定なインドで、重要な通信インフラである携帯電話基地局に日本のエネルギーマネジメントシステムを導入。ディーゼル燃料の使用量削減に成功した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2013年度からインド各地で取り組んできた「携帯電話基地局エネルギーマネジメント実証事業」において、83%のディーゼル燃料の消費量削減と、60%のCO2排出量削減を達成したと発表した。今後、得られた成果をインド国内に広く普及させ、省エネルギーおよび環境負荷の低減への貢献を目指す。
インドをはじめとする新興諸国では、通信手段として携帯電話が広く普及している。それに伴い、携帯電話基地局数の設置は拡大傾向にある。携帯電話基地局は常時稼働している必要がある一方、電力事情が良くないインドでは、系統電源の停電が頻発することから、多くの携帯電話基地局で非常用電源としてディーゼル発電機と鉛蓄電池を設置している。
こうした状況のもと、NEDOとNECおよび海外で光触媒関連事業を展開するピクセラ(大阪市)は、インドの携帯電話基地局数に日本のエネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入し、ディーゼル燃料の使用量を削減する実証事業を開始。これは、携帯電話基地局の電力供給のために、太陽光発電と、鉛蓄電池より充放電効率が高いリチウムイオン電池を導入し、EMSで最適に管理することでエネルギー利用の最適化を図るものだ。さらに、ピクセラの光触媒を基地局シェルターの屋根や外壁に塗装することで、室内の温度上昇を抑制し、エアコン使用量の削減も図った。
実証事業では2013年度から約3年間、インド各地の計62カ所の携帯電話基地局にEMSを導入した他、約48カ所の基地局シェルターの屋根および外壁に高日射反射率の光触媒を塗装した。その効果を計測したところ、無停電地域から一日当たりの停電時間が数時間程度までを含む実証局20局の平均で、83%のディーゼル燃料の消費量削減を達成している。また、光触媒塗料の塗装によるエアコン使用量の削減により、平均4.3kWh/日の消費電力量の削減を実現した。CO2排出量については、ディーゼル燃料の消費量の削減に伴い60%、光触媒塗料の塗装による消費電力量の削減に伴い4kg/日の削減に成功している。
ディーゼル発電機と鉛蓄電池を設置した従来システムに対して、当初同事業では50%を超える省エネ率の達成を目標としていた。実際には、各携帯電話基地局の系統電力の状況にも左右されるものの、目標を大幅に上回る省エネ率を達成している。
なお、今回の実証で得られたエネルギー削減効果を基に、導入したシステムのTotal Cost of Ownership(TCO)を算出した結果、ビジネスモデルとして成り立つ収益が得られる見込みであることも確認したという。NECは同実証事業で獲得したノウハウを生かし、今後、40万局以上の携帯電話基地局を持つインド国内における具体的な事業を検討していく予定だ。
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