進む「アジアスーパーグリッド構想」、モンゴルで50MWの風力発電所が稼働:自然エネルギー
ソフトバンクグループが出資する50MWの風力発電所がモンゴルのゴビ砂漠で稼働を開始。年間発電量は2億kWhを見込む大型のウィンドファームだ。
ソフトバンクグループのSBエナジーと、クリーンテクノロジーとインフラへの投資事業を行うNewcom(モンゴル・ウランバートル市)による合弁会社Clean Energy Asia(同)は、このほどモンゴルのゴビ砂漠で、出力50MWの風力発電所の営業運転を開始したと発表した。
この風力発電所「Tsetsii Wind Farm」は、モンゴル国内の電力需給問題への貢献および自然エネルギーの促進と、同国の持続的な経済発展および気候変動の緩和に寄与することを目的に、Clean Energy Asiaが発電事業者として建設。発電した電力はモンゴル国内向けの送電網に接続し、モンゴルでの国内で利用される。
発電所の所在地はウムヌゴビ県ツォグトツェツィー郡。出力規模は50MWで、2000kWの風車を25台導入した。年間予想発電量は約2億kWhとしている。 同プロジェクトは、JICAによる自然エネルギー分野では初の海外投融資によるドル建てプロジェクトファイナンス案件であり、SBエナジーおよびソフトバンクグループにとってはモンゴルでの初の発電事業となる。
モンゴルでは国全体で1130MWの電源設備容量が設置されており、その電源構成は石炭火力88%、ディーゼル6%、自然エネルギー6%、水力2%となっている。一方、経済成長に伴う電力の需給のひっ迫が喫緊の課題となっている。
モンゴルでは2015年に、2030年までのエネルギーセクターの中長期目標を定めた国家電力政策が国会で承認され、総発電容量に占める自然エネルギーの割合を2020年までに20%、2030年までに30%まで引き上げることを目標としている。計画では国際金融機関やドナー国と協力してエネルギー分野の投資促進を行うこと、ゴビ地域の豊富な太陽光、風力資源を活用するといった内容が盛り込まれている。
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、今回の風力発電所の稼働に際し、「2011年に発表した『アジア・スーパー・グリッド構想』をきっかけに、ソフトバンクグループによるモンゴルでの自然エネルギー開発の取り組みがスタートした。このプロジェクトが運転開始を迎えたことで、当グループは日本、インドに加え、モンゴルでもアジア・スーパー・グリッド構想に基づく自然エネルギー事業の橋頭堡(きょうとうほ)を築けたことを大変うれしく思う」と述べた。
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