バルブメーカーが小型水素ステーション建設、その狙いは:電気自動車
バルブメーカーのキッツが山梨県の自社工場に水素ステーションを建設。パッケージユニットを用いた小型ステーションで、1時間にFCV2台を満充填(じゅうてん)できるという。
バルブメーカーのキッツは2017年10月、同社の長坂工場(山梨県北杜市)に、小型パッケージユニットを用いた水素ステーションを自家用設備として建設すると発表した。完成は2018年3月を予定している。
経済産業省のロードマップでは燃料電池自動車(FCV)の普及を目指し、2020年160カ所、2025年320カ所、2030年には900カ所の水素ステーションを整備する計画となっている。しかしながら従来と同規模の水素ステーションでは、現在の車両普及台数に対し、建設および運営コストともに高額になるため、本格普及期に向けては、市場の規模に適した大きさの水素ステーションが必要になるとみられる。
そこでキッツは、圧縮機と蓄圧器をパッケージ化した小型ユニットを用いた水素ステーションを建設する計画だ。建設後は社用車として利用するFCVや燃料電池フォークリフトに水素を供給し、運用の実証を行う。水素の供給方式はオフサイト供給方式で、供給能力は55Nm3/時、充填(じゅうてん)圧力はFCV用が70MPa、燃料電池フォークリフト用が35MPa。1時間にFCV2台を満充填できるという。
同社は、2012年7月からFCVなどに燃料となる水素ガスを供給する水素ステーション用バルブを生産している。今回の水素ステーションの建設では、今後のバルブ開発に向けたノウハウの蓄積を行う狙いもある。将来的にはコンパクトかつ高機能で、安価な小型パッケージユニットを市場へ提案することも視野に入れている。なお、完成後は長坂工場敷地内のLNGサテライト基地とともに、見学施設としても活用する計画だ。
同社のバルブは、2017年6月時点で、国内の商用水素ステーション99カ所(2017年度計画分含む)に採用されているという。今回の建設する小型パッケージユニットを用いた水素ステーションは、「世界で唯一」(キッツ)をうたう100MPaクラスの水素ガスを封止可能な自社製ボールバルブを採用。流体温度の影響を受けにくい高い封止性能と耐久性が特徴で、水素ステーションに向くという。ハンドルを90度回転させることで流体を止めたり流したりすることができ、操作性が良く、流路が直線であるため圧力損失が少ないという特徴もあるとしている。
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