AI技術を使うメリットとは、社会・電力インフラの保全:IT活用(2/2 ページ)
三菱電機が社会・電力インフラ向けの新しいIoTプラットフォームサービスを発表。設備の稼働情報などの収集から、AI技術を利用した保全支援サービスなどまでを一貫して提供する。
“いつもと違う”を自動検出
設備の異常を検知する方法として、温度や圧力、振動、電力などの取得した信号データが、事前に設定したしきい値を超えた場合に警告を発するーーといった方法がある。しかし、この方法だと、しきい値を超えない範囲で微細な変化や異常が発生していた場合は検知ができない。
一方、INFOPRISMのAIを活用した分析では、まず取得した信号データの波形パターンを学習させる。その後は、設備が適正状態にある時の信号データをベースに、波形の変化を検知する。波形パターンを直接比較することで、しきい値監視では見つけることができない微細な変化を捉えられるため、設備が“いつもと違う”状態になった場合、迅速に検知できるという。
三菱電機ではこうした高度な分析を行うメリットとして、計画外の設備停止の防止、メンテナンスや設備更新計画の見直し効率化が図りやすくなるとしてる。さらに複数の設備をまとめて遠隔監視できるようにすることで、これまでは設備ごとに用意していた専任担当者を、削減するといったことも可能になるという。
この他、社会・電力インフラ向けのサービスとして、セキュリティ機能も高めたという。三菱電機のサイバー攻撃を物理的にブロックするデータダイオード「MELARROW(メルアロー)」を採用した他、暗号化情報を復号せずに検索できる機能などを搭載した。
なお、INFOPRISMの導入費用については、個別見積もりとなる。社会・電力インフラ向けのIoTサービスは、既に複数社が展開を始めているが、こうした競合との競合との違いについて、三菱電機 神戸製作所の久山和宏開発部長は「IoTゲートウェイの耐環境性を高めたり、セキュリティを高めたりなど、社会・電力インフラ向けに特化したサービスである点が特徴」と語っている。
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