架空送電線の診断にAI活用、作業時間を50%短縮:IT活用
東京電力パワーグリッドなどが、架空送電線の診断作業にAIを活用する新しいシステムの開発に着手。目視による作業を効率かすることで、点検作業時間を50%以上削減できる見込みだという。
東京電力パワーグリッド(東電PG)とテクノスデータサイエンス・エンジニアリング(TDSE、東京都新宿区)は、人工知能(AI)を活用した架空送電線診断システムの共同開発を開始した。2018年度上期の運用開始を目指す方針だ。
東電PGは、通常の架空送電線の健全性確認において、保守作業員による高倍率スコープを用いた地上からの点検や、実際に鉄塔に昇り、専用の器具で送電線にぶら下がりながらの点検を行っている。一方、山間部など保守作業員が容易に確認できない一部の架空送電線については、ヘリコプターで撮影したVTRを作業員がスローモーション再生で確認して点検を行っており、この作業に長時間を要していた。
そこで診断の効率化を目指し、東電PGがこれまでに蓄積してきた架空送電線のVTR撮影データや点検技術と、TDSEが保有する深層学習の技術を融合させた診断システムの開発を目指すこととした。TDSEは、金融、製造、流通・情報サービスなどの大手企業などを中心に、200テーマ以上のコンサルティング・データ解析実績がある。「異常検知ソリューション」などのIoTデータ分析ソリューションなども提供しており、製造業を中心に実証実験や共同プロジェクトを推進しているという。
開発するシステムは、深層学習による画像解析を活用することで、映像から自動で異常箇所の検出を行えるようにする。これまで作業員が確認していたVTRによる点検作業時間を、50%以上削減できる見込みという。また、架空送電線の点検作業に導入を検討しているドローンで撮影したVTRデータにも適用できるようにする方針だ。なお、開発するシステムのプラットフォームには、Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」を利用する。
今回の開発を通じて、東電PGは、電力設備の保全技術の高度化とコスト削減を推進する。TDSEは今回開発するシステムをはじめ、AIを活用した設備保全効率化サービスの展開を進めるとしている。
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