2050年のエネルギー、水素が世界の2割を締める可能性――水素協議会が報告:自然エネルギー
世界の自動車、エネルギー関連企業などが参加するHydrogen Councilが報告書を公表。2050年までに世界のエネルギー消費量全体の約2割を水素が担う可能性があるとしており、そのCO2削減効果や経済効果などのメリットについても言及している。
世界の自動車、エネルギー関連企業などが参加するHydrogen Council(水素協議会)は、「Hydrogen, Scaling up(水素市場の拡大)」と題する調査報告をこのほど発表した。水素の本格的な普及とエネルギー移行についてのロードマップを示しており、2050年までにエネルギー消費量全体の約5分の1を水素で担うことが可能としている。
報告書ではエネルギー消費量全体の約5分の1を水素が担った場合、CO2排出量は現状比で年間約60億t減らすことができるとしている。これは、パリ協定などで掲げられている「地球の平均気温の上昇を2℃未満に抑える」という目標達成に必要なCO2削減量の約20%に相当するという。さらに、水素の普及によって、2.5兆ドルに相当するビジネスと、3000万人以上の雇用を生み出せる可能性にも触れている。
需要に関しては、2030年までに1000〜1500万台の燃料電池乗用車と、50万台の燃料電池トラックが普及すると試算した。その他、例えば産業上の工程で、原材料、熱源、動力源、発電用あるいは貯蔵など、さまざまな形式での水素利用が進むと想定する。こうした影響で、水素需要は2050年までに現在の10倍になると予測している。
Hydrogen Councilの共同議長を務めるトヨタ自動車の内山田竹志会長は、「21世紀の世界では、低炭素エネルギーの使用を拡大する方向に移行する必要があり、その際に水素は大きな役割を担う。水素を媒体とすることで風力、太陽光、そのほかの再生可能なエネルギーで発電された電力を貯蔵・運搬し、運輸などさまざまな分野で利用することが可能になるためだ。当協議会は、水素が持つ7つの役割を明確にしたが、このことを通じて、政府や投資家に対し水素をエネルギー計画に組み込むよう要望している。水素に根差した経済を早く実現することで、水素社会の実現に向け、皆がより一層力を合わせることができると考えている」などと述べている。
一方、こうしたレベルまで水素を導入するには、多くの投資も必要となる。報告書では投資額は概ね、年間で200〜250億ドル、2030年までの累計では2800億ドル必要であると試算している。なお、現在、世界中で毎年1.7兆ドルがエネルギー分野に投資されおり、その中には石油・ガス(6500億ドル)や再生可能エネルギー(3000億ドル)、自動車産業(3000億ドル以上)が含まれているという。
調査報告では、長期間の安定的な政策的インセンティブを含む、適切な規制の枠組みがあれば、水素大量導入に向かう投資は投資家にとって魅力的なものとなると結論付けており、発表の中では改めて投資家、政策立案者、ならび各企業に、エネルギー移行に向けて水素導入を加速するよう呼び掛けた。
Hydrogen Councilはエネルギー移行に関して、水素技術が果たす役割を推進する世界的なイニシアチブ。2017年初めスイス・ダボスで開催されたWorld Economic Forumの場で発足した。現在のメンバーは自動車、エネルギーなど関連の18の企業(日本は本田技研工業、岩谷産業、川崎重工業、トヨタ自動車)と、10のバリューチェーン上の企業(日本企業は三菱商事、三井物産、豊田通商)で構成されている。
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