普通・急速・ワイヤレス――EV充電インフラはどう普及するのか:電気自動車(2/2 ページ)
電気自動車やプラグインハイブリッド車の市場拡大が急加速する中、普及を支える充電インフラ市場は今後どのように推移するのか。富士経済がその展望をまとめた。
中国は同急速充電器29万3000本、普通充電器(パブリック)110万本、ワイヤレス給電システム60万台、バッテリースワップシステム1000システムと予測する。中国では政府によるEV普及計画とそれに後押しされた地方政府の補助もあり、急激に充電器の設置が進んでいる。2030年に向けて、内燃車の段階的販売禁止措置によりEV販売が加速し、低コストの普通充電器の設置が更に増加するとの見方だ。将来的には既に商用車向けで実用化が進んでいるバッテリースワップシステムと走行中のワイヤレス給電システムの導入が期待される。
製品別では、急速充電器は15〜30分程度で約80%の充電が可能であり、中・長距離の移動途中での継ぎ足し充電(経路充電)などを目的に、中国や日米欧を中心に高速道路や幹線道路沿いで設置が進んでいる。出力25kW程度の中速充電器の比率が高いが、150kW以上の急速充電器も欧米中で設置され始めている。また、欧州を中心に急速充電器の高出力化(出力350kW)が進められている。超急速充電器の実用化によって充電時間は大幅に短縮可能となるものの、低価格化など解決すべき課題は多いようだ。2035年での予測は45万7500本(2016年5万8980本)としている。
普通充電器(パブリック)は、公共に設置される普通充電器を対象とし、個人・家庭用は普通充電器(プライベート)でまとめている。ショッピングセンターやコンビニエンスストア、公共施設、宿泊施設、一時貸駐車場など、買い物や娯楽などの目的地での滞在中に合わせて充電する目的地充電などでは普通充電器が設置されることが多い。急速充電器よりも低コストで設置可能なことから、充電インフラの第一選択肢として今後も普及が続いていくとしている。長期的にはインド、ブラジルなどで、電力供給面に不安が残ることから急速充電器よりも普通充電器が普及していくとみられる。2035年の予測は209万300本(同25万1190本)。
ワイヤレス給電システムは、非接触による電力伝送方式で電磁誘導方式、磁界共鳴方式などがある。地面などに送電装置を、車に受電装置を設置し、充電場所に車を停車させるだけで自動的に充電が始まる仕組みである。2017年からEvatran Groupがアフターマーケット製品として、QualcommがEVやPHVのオプション仕様として展開している。国内ではダイヘンも実証事業向けのシステムの市場投入を開始した。
SAE(米国自動車技術会)が先行する形で標準化規格の策定が進められており、2018年中にもWPT規格「SAEJ2954」が確立される見通しである。以降、自動車メーカーや自動車部品サプライヤーが続々とワイヤレス給電システムを投入することで急速に普及が進んでいき、2035年までに中国、米国、日本、ドイツなどを中心に175万台の設置が予測される。
EVのバッテリーを、新品または充電済みのものに短時間で交換するサービスであるバッテリースワップシステムは、2010年代前半に一度市場が形成されていた、現在参入プレーヤーはいないとしている。交換作業をほぼオートメーション化することで5分以内にバッテリー交換が可能で、急速充電器などと比較しても充電の速さに優位性がある。しかし、車種を問わずバッテリーの交換を可能にするための規格統一などの障壁が課題だ。中国では既にEVバス、EVタクシーなど商用車向けのバッテリースワップシステムが稼働しており、EV向けは2020年頃から市場が立ち上がると予想される。車両側の設計・仕様面の統一が必要となるが、中国は国内EVメーカーも多く、国家指針として本格導入が固まれば、一気に普及が進むとの見方だ。2035年予測は1860システムとしている。
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