岩手県で大規模ソーラーシェアリング始動、麦栽培と発電を両立:自然エネルギー
岩手県一関市で大規模なソーラーシェアリングプロジェクトが始動。リニューアブル・ジャパン、東急不動産、日本アジア投資が手掛ける事業で、太陽光発電事業と麦などの有機栽培の両立を目指す。
リニューアブル・ジャパン(東京都港区)と東急不動産および日本アジア投資は、岩手県一関市の国営開発農地を有効活用した大規模ソーラーシェアリング事業の実施に向けて、このほど2つの太陽光発電所の建設を開始した。東北銀行からのプロジェクトファイナンスによる融資を受けて実現したもので、三菱電機システムサービスが設計・資材調達・建設(EPC)を行う。
同事業は太陽光パネル下で付加価値の高い営農を実施し、食糧とエネルギーの自給に貢献することを目的としている。太陽光パネルの下では、小麦・大麦の有機栽培や特別栽培に取り組む計画だ。パネルの高さを地上3.5メートル以上とし、トラクターやコンバインなどの農業機械を使用できるようにする。
同事業で建設する一関市吉高太陽光発電所は2018年6月から、一関市鈴ヶ沢太陽光発電所は同年10月から発電を開始する予定だ。太陽光パネルは三菱電機製の単結晶太陽電池モジュールを使用し、出力はそれぞれ2629.88kW(キロワット)。両発電所を合わせた設備容量は合計約5.3MW(メガワット)となり、国内で稼働するソーラーシェアリングの中では最大級となる。想定年間発電量は年平均で約6075MWh(メガワット時)を見込む。これは一般家庭約1268世帯分の年間使用電力量に相当する。
発電所稼働後は発電事業者となる合同会社吉高鈴ヶ沢(東京都港区)と藤沢農業振興公社との間で締結した営農支援業務委託契約に基づき、売電収入の一部を20年間にわたって営農支援費用として公社へ支払う。
リニューアブル・ジャパンは、2013年に一関市と立地協定を締結し、一関市内で7箇所の太陽光発電所を開発している。今後も、再生可能エネルギー事業のデベロッパーとして、自治体や地域の関係者と密に連携することで地域に根ざしたソーラーシェアリング事業を積極的に推進する方針だ。
東急不動産は新たな投資対象資産であるインフラ・インダストリー分野の再生可能エネルギー事業で、これまで2カ所の大規模太陽光発電所を開発している。今後はソーラーシェアリング事業についても拡大に取り組む。
日本アジア投資はこれまでに日本各地で34カ所の太陽光発電所開発プロジェクトに投資してきた。今回の事業は、同社初のソーラーシェアリングプロジェクトとなる。今後も引き続きソーラーシェアリング事業に積極的に投資を行う計画だ。
三菱電機システムサービスは2011年から太陽光発電システムのEPC事業に本格参入以来。350MW程度の発電所を建設実績があり、最近では水上設置型の太陽光発電所は、営農対応のソーラーシェアリングの企画開発を推進している。
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