EVユーザーの充電行動、インセンティブで変化はあるか:電気自動車
東京電力と日産は、電気自動車(EV)を利用したバーチャルパワープラントの構築実証に着手。電力需要の少ない時間帯に充電したEVユーザーにインセンティブを付与するシステムを構築し、充電行動の変化を検証する。
東京電力ホールディングス(東電HD)と日産自動車はこのほど、電気自動車(EV)を活用したバーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)の構築に関する実証試験を開始した。EVを将来的に需給調整に活用するためのサービスモデルを検証する狙いだ。
実証試験では日産の商用タイプEV「e-NV200」のモニターである東電HDの社員30人と、「日産リーフ」を所有する日産社員15人の計45人が参加する。東電HDがEVの蓄電池の充放電を管理する「仮想EVアグリゲーター」となり、参加者に対し系統電力需要の小さい時間帯を情報提供する。指定された時間帯に充電を行った参加者には、充電電力量に応じてインセンティブが支払われるという仕組みだ。一定規模のEVユーザーがどの程度の比率で充電時間のシフトを実施するかを検証し、将来EVが大量普及した際の調整力の予測や、今後のビジネスモデルの評価指標として活用していく狙い。
実証試験では、既存のシステムインフラを生かし、大掛かりなシステムを構築することなくEVを電力系統運用の調整力として活用する点が特徴となっている。EVの情報監視・制御には日産のテレマティクスシステム(EVユーザーに提供している車両状態の監視、充電制御をスマホアプリで遠隔制御できるサービス)を、ユーザーインタフェースと情報の収集管理には充電スタンドの検索サービスアプリの「EVsmart」をそれぞれ活用する。これらはいずれも既に提供しているサービスで、実証事業に参加するEVユーザーはスマートフォンにアプリをインストールするだけで新たな装置やコスト負担なしに実証試験に参加することができる。試験期間は2018年1月末まで。
今後、東電HDは、多くの自動車メーカーの多様な電動車両に対応可能なシステムとなるよう開発を進める方針だ。また、より調整力を高めるために、EVからの放電としてV2Hなどさまざまな充放電装置に対応可能なシステムの開発も進める。
日産は、EVを活用したVPPの構築に向け、実証プログラムを通じて電力会社とグローバルに提携し、新しいスマートエネルギー社会への貢献を目指すとしている。
関連記事
- EVを電池として活用、使用済みバッテリーも生かすVPP実証
日本ベネックスと住友商事が、VPP事業に参画。日産のEVと、使用済みの蓄電池を活用したシステムを日本ベネックスの本社工場に導入し、VPPを構築する。 - リチウムを超える「アルミニウム」、トヨタの工夫とは
電気自動車に必要不可欠なリチウムイオン蓄電池。だが、より電池の性能を高めようとしても限界が近い。そこで、実質的なエネルギー量がガソリンに近い金属空気電池に期待がかかっている。トヨタ自動車の研究者が発表したアルミニウム空気電池の研究内容を紹介する。開発ポイントは、不純物の多い安価なアルミニウムを使うことだ。 - 日産が家庭用蓄電池を発表、躍進するテスラとEV以外でも競合に
日産自動車が新たなエネルギー事業分野への取り組みを発表した。同社の電気自動車で使用したバッテリーを活用した家庭用蓄電池を欧州地域で販売する。さらにイタリアの企業と共同で電気自動車と電力網の接続実証にも取り組む計画だ。 - ソーラー充電が可能な「プリウスPHV」、太陽光でどこまで走るか
トヨタ自動車は「スマートコミュニティJapan 2016」で新型「プリウスPHV」を日本初展示した。蓄電池の電力のみで走行するEV走行距離が大幅に伸びたほか、ルーフ部分に搭載した太陽光パネルで給電を行えるのが特徴だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.