火力発電のCO2を50%回収、実証設備の建設始まる:蓄電・発電機器
東芝エネルギーシステムズは、火力発電所から排出されるCO2(二酸化炭素)を分離回収する実証設備の建設工事を、2018年2月に開始すると発表した。本実証は、火力発電所から排出されるCO2の50%以上を回収する国内初の設備となる予定だ。
東芝エネルギーシステムズは、火力発電所から排出されるCO2(二酸化炭素)を分離回収する大規模な実証設備の建設工事を2018年2月に開始すると発表した。CO2分離・回収設備の機器の納入、据え付け、試運転を経て、2020年の夏に実証運転を開始する。同社は、本実証によって技術、性能、コスト、環境影響等の評価を行うとともに、クリーンなエネルギーの創出への取り組みを強化する方針だ。
今回の実証設備は、グループ会社であるシグマパワー有明の三川発電所(福岡県大牟田市・出力5万kW)から1日に排出されるCO2の50%にあたる500トン以上のCO2を分離回収することができる。これは、火力発電所から排出されるCO2の50%以上を回収可能な国内初(同社調べ)の設備という。また、三川発電所はパーム椰子殻(Palm Kernel Shell)を主燃料としたバイオマス発電を行っており、バイオマス発電所の排出するCO2を分離・回収する世界初(同社調べ)の大規模設備となる予定だ。
同社は2009年以来、同発電所内に建設したCO2回収量10トン/日規模のパイロットプラントでCO2分離回収システムの開発を積み重ね、実際の火力発電所におけるシステム性能を実証するとともに運用性などについて検証を進めてきた。2016年には、清掃工場の商用利用では世界初となる同社製CO2分離回収プラントが佐賀市で稼働するなど、火力発電所の排ガスをはじめとして、多種多様な排ガスへの分離回収システムの適用も目指すという。
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