韓国で義務の「火力+新エネ」、固体酸化物形燃料電池を初めて採用:蓄電・発電機器
Bloom Energy Japanの固体酸化物形燃料電池が韓国の火力発電所に導入されることが決まった。韓国では発電事業者に対し、一定割合の電力を再生可能エネルギーまたは燃料電池で発電することを義務付けている。
ソフトバンクグループで発電事業を行うBloom Energy Japan(東京都港区)は、韓国南東発電会社(KOEN、大韓民国晋州市)が実施した盆唐(ブンダン)複合火力発電所(同城南市)に設置する燃料電池設備の競争入札で、同社の8350kW(キロワット)の業務・産業用燃料電池発電システム「Bloomエナジーサーバー」が採択されと発表した。現地の工事会社であるSK Engineering&Construction(SK E&C、ソウル市)との共同入札によるものだ。
Bloomエナジーサーバーの技術は、NASAの宇宙プロジェクトを通して開発されたもので、都市ガスや天然ガスを燃料とし、発電効率が初期値で60%を超える固体酸化物形燃料電池(SOFC)だ。設置やメンテナンスの容易さも特徴としている。アメリカ合衆国では画期的な分散型のベース電源としてデータセンターや工場、大規模商業施設、官公庁など、電力の持続的な供給が必要とされる施設での導入が進んでいるという。日本国内では、軸受製造などを手掛けるポーライト(さいたま市)の工場や、慶應義塾大学は湘南藤沢キャンパス(神奈川県藤沢市)などへの導入実績がある。
韓国では、500MW(メガワット)以上の発電容量を持つ発電事業者に対し、一定割合の電力を再生可能エネルギー、または燃料電池を含む新エネルギーで発電することを義務付ける「RPS(Renewables Portfolio Standard)制度」が採用されている。今回、KOENはこの履行義務の達成のために燃料電池を導入し、運転開始は2018年内を予定している。
Bloom Energy Japanによると、今回の案件は同社初の日本国外での事業かつ、韓国で初の業務用・産業用固体酸化物形燃料電池(SOFC)の導入事例になるという。発電施設内に既設のLNG設備を使用した天然ガス供給により運転を行う。発電した電力は、全量をKOENが個人や企業などの一般顧客に対して販売する。
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