EVの充電を遠隔制御、需給調整に活用するVPP実証スタート:電気自動車
関西電力、住友電気工業、日産自動車がEVを活用したVPP実証を開始。需給調整が必要になった場合、EVの充電を遠隔制御し系統安定化に活用できるかを検証していく。
関西電力、住友電気工業および日産自動車は、経済産業省資源エネルギー庁の補助事業の「バーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」において、電気自動車(EV)の充電遠隔制御実験をこのほど本格的に開始した。同実験では3社が協力し、VPPシステムとEVの車両情報を連携させて技術的知見を蓄積する。今後の見込まれるEV普及による運輸部門の低炭素化と、電力の安定供給に貢献する技術の確立を目指す。
VPP構築実証事業である「関西VPPプロジェクト」(関西電力を中心とするVPP実証コンソーシアム)では、現在、EVおよびプラグインハイブリッド車(PHV)をエネルギーリソースとして活用した取り組みを実施している。
この中で、関西電力の事業所や一般家庭にあるEV/PHV60台に対して、新たに開発した「EVスイッチ」を導入し、充電を遠隔制御する。EVスイッチは関西電力と住友電工が開発したEVおよびPHVの充電を必要に応じて遠隔制御する機器で、多様な車両に対応している。こうした装置を活用した実証は、全国初の取り組みになるという。
実証では、系統運用者や再エネ発電事業者などの取引先(実証では想定となる)から、電力調整依頼を受けて調整を行う関西電力のVPPサーバと、その指令に基づいてEVおよびPHVの充電を制御する住友電工のEVサーバの2つを、EVから車両情報を取得する日産自動車のテレマティクスサーバと連携させる。EVの車両情報を基に、充電による電力調整可能量を把握。そして、EVスイッチで日産自動車製EVの充電の遠隔制御を行う。
例えば余剰電力が発生した場合、充電が可能なEVを探して電力供給を行うことで、系統の安定化を図るといった使い方ができる。EVやPHVの所有者に対して遠隔充電への参加、不参加を確認する際には、スマートフォンアプリを活用する。
実験期間は2017年2月28日までの予定。なお、今回得られた結果から、EVの利用方法や制御データなどを分析し、VPPのエネルギーリソースとしての評価を行うことにしている。
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