梅干しの廃液を浄化しながら発電、和歌山でバイオガス事業:自然エネルギー
住友重機械エンバイロメントは、梅加工食品の大手である中田食品からバイオガス発電型嫌気性廃水処理システムを受注したと発表した。梅調味廃液の浄化工程で発生するバイオガスから360キロワット(kW)の発電ができる。
住友重機械エンバイロメント(東京都品川区)は、梅加工食品の大手である中田食品(和歌山県田辺市)からバイオガス発電型嫌気性廃水処理システムを受注したと発表した。この廃水処理システムは、調味梅干しの加工に用いられた梅調味廃液を浄化しつつ発電できることが特長だ。
従来、梅調味廃液は糖分が高く嫌気処理設備には不向きとされていたが、住友重機械エンバイロメントは独自技術でこの問題を解決した。今回の計画では、中田食品が2019年1月をめどに和歌山県上富田町で「中田食品バイオガス発電所」を新設。自社と地域で発生する梅調味廃液を受け入れ、嫌気処理設備「バイオインパクト」で浄化し処理工程で発生するバイオガスで発電を行う。
同発電所の梅調味廃液処理量は日量20立方メートルで、発電機出力は360キロワット(kW)。中田食品では、年間発電量を一般家庭400世帯に相当する200万キロワット時(kWh)と見込む。
梅加工業は中小の企業が多く、梅調味廃液の処理費用が大きいことが業界内での課題となっていた。和歌山県および上富田町もこれまでさまざまな処理方法を検討しており、今回の計画についても積極的な支援があったという。
本バイオガス発電システムの導入によって、廃液の嫌気処理が可能になったことから従来の活性汚泥に比べ低コストで処理でき、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を活用した売電との相乗効果で処理費用の大幅な削減が期待される。
住友重機械エンバイロメントは食品、化学、紙パルプなどの工場排水および公共向けに多くの嫌気処理設備を導入しており、今後は地域特産品など同様の課題を持つ業種、地域に対し官民連携による提案を推進するとしている。
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