知らないと損する太陽光発電の「リパワリング」、なぜ海外では重要視されるのか:太陽光(3/3 ページ)
太陽光発電で先行するドイツなどの欧州で重要視されている発電所の「リパワリング」。そもそもリパワリングとは何か、欧州で重要視される背景にはどういった理由があるのだろうか?
リパワリングの実施、判断のポイントは?
投資家にとっては当たり前かもしれないが、リパワリングの実施を検討するにあたり、下図のような、「利回りに影響する要因」と「発生する費用」のバランスをみなくてはいけない。
売電単価がkW(キロワット)当たり42円と21円では投資リターンが大きく異なり、収益に大きく関わってくる。例えば、同規模の発電所Aと発電所Bにおいて、それぞれの売電単価は42円と21円だとする。どちらの発電所も、出力が本来の90%しか出ていない場合、リパワリングを実施することで本来通り100%の出力が出たとしても、最終的な収益は大きく異なる。また、売電期間も大きく影響し、リパワリングした際の費用を何年で償却できるかもリパワリング実施の大きな判断材料となる。
ドイツで実際にあったリパワリング事例について紹介させていただきたい。北ドイツにある2009年連系、売電単価0.32ユーロ、2.5MW(メガワット)規模の発電所では、稼働を開始した2009年時点では発電能力が100%だったのに対し、2010年には84%、2015年になるとなんと56%まで下がっていた。稼働初期にここまで発電低下が出てしまったため、コストとリパワリングによる収益改善を鑑みて、モジュールの全交換をおこなった。
この発電所の建設コストは600万ユーロ(日本円で約8億1000万円、以下同)だったが、発電低下への対処を怠ると毎年−168万ユーロ(−2億2000万円)にもなってしまうことから、リパワリングを実施することにした。リパワリングコストは、170万ユーロ(2億3000万円)ほどかかってしまったが、これによりキャッシュフローは546万ユーロ(7億4000万)まで改善し、償却期間も4年以下に収まった。投資家にとって非常に利益の出たリパワリングのケースである。このようにドイツでは、リパワリングにより目覚ましい収益改善につながったケースが多くあるのだ。
日本の発電所オーナーや投資家は、受け入れ検査や竣工検査などのTDDを実施しなくても特に問題ない、必要ないと判断されている方も多い。また現在、発電所は“売り手市場”で、売りに出せばすぐ買い手がつくとお考えかもしれないが、発電パフォーマンスがいい発電所でないと買い手がつかないという現象が起きている。将来的に発電所を手放すことを考えた場合にも、TDDやリパワリングは非常に大きな役割を果たすといえる。
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